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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

「iPad」の出現で考えたこと。

 5月28日にアップルから、「iPad」が発売されました。早速、私もその力を試してみたくなり、購入しました。以前、4月7日のこのブログで、代替手段を用意することの大切さをお話ししましたが、この製品こそまさに私たちのような読み書きが困難な人達の代替手段としてうってつけのものです。
 既に「iPhone」にもあるのですが、「アクセシビリティ」という機能が基本設定に入っています。この中に「ヴォイスオーバー(画面上の文字を読み上げる)」や「ズーム(画面の一部を拡大する)機能」「黒地に白(文字を白抜きで表示。写真参照)」等、読みやすい機能があります。これは本当に助かります。情報保障という観点から言えば、ディスレクシアの人だけでなく、高齢者も含む様々な「読みづらさ」を感じている人にとって、画期的なものだと感じます。
 従業員全員に「iPhone」を導入し、障害者雇用における支援機器として、いかに活用していくかを真剣に模索している企業もあるようです。

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 ここで私が何をお伝えしたいかというと、何も流行に乗ってほしいということではありません。今まで、支援者がいなければできなかったことが、このツールによって自分でできるようになるのです。機械に全てを委ねるわけではありませんが、生活スタイルが変化をする可能性が高いのは間違いありません。つまり、未来が変わるということ。その一つの手段として、使用するのも、決して悪いことではないと思います。
 
 「自分でできることが増える」ということは、自信につながってきます。支援をうける側の当事者は、支援をありがたく思いつつも、「申し訳ない」という思いが強いものです。できないことはできないで人に頼ることも大切なのですが、やはり、自分でできることは、できるだけ自分ですることで、自分の「生きる力」を十二分に感じることができるはずです。

 ただ、ここで大切なことは、「自分で選択できる力を養うこと」です。最新のツールを自分にあわせてカスタマイズすれば、何でも自分でできるようになるかもしれません。しかし、その分、どんなツールをどんな風に使うのか、自分の頭で考えていく力が必要です。さらに、「自分でできること、できないこと」の整理をして、どこまでは自分の力で成し遂げて、どこから支援者に頼るのかを考える。この絶妙なバランスが、生きていく上で、非常に重要になってきます。

 「依存し過ぎず、頼っていく」。これこそが、本人達にとって、一番楽な生き方になると思うのです。そうしないと、時に不安感や孤独感が押し寄せてしまい、心理的に不安定になってしまう。いくらツールが発達しても、それを回避するための手段はもっておいたほうが良いと思います。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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