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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」 2010年06月

本を出版した理由

 私は昨年、一昨年と1年に1冊ずつ、自分の障害に関わる本を出版させて頂きました。1冊目は、『私たち、発達障害と生きてます―出会い、そして再生へ』という、さまざまな発達障害をもつ成人当事者たちの手記集でした。
 この本を出したことで、発達障害とはいっても、人によってここまで違いがあるんだと思い知らされました。また、登場したのが成人してから発達障害と判明した方たちばかりで、その間に経験された悪戦苦闘の数々に、「よく、生き続けましたね」と思わないわけにはいきませんでした。そして、「成人してから、自分の発達のバランスの悪さに気づくというのは、ここまで、辛いものなのか」と、自分もその一人として改めて痛感しました。



啓発活動への決意

 「ディスレクシア当事者」として話をしてほしいという依頼を頂いたのが、ちょうど3年半前。私は自分の中に何か明確に伝えたい事をもっていたわけではなく、その場では、母校であるアットマーク国際高校の「学習コーチング」を取り入れた学習法が自分自身に適合して、長所を活かすことができたというようなお話をさせていただきました。



あるNPO団体との出会い

 アルバイトには果敢にチャレンジしていましたが、何度も挫折を繰り返しました。「読み書き」がうまくいかないということが、ここまで理解されず、「怠け」として捉えられるのかと思い知らされ、路頭に迷うような日々が続いていました。しかし、諦めるわけにはいかない。高校卒業という節目を乗り越えたことによって、心の中に「希望の灯火」が弱々しくも光りはじめていました。そこで、ボランティアという立場で社会と関わろうと、母校のアットマーク国際高校の先生達に協力いただき、NPO団体の訪問を始めました。そして、自分にマッチしそうな団体のボランティアに参加し、なんとか社会との繋がりを保とうとしたのです。



「iPad」の出現で考えたこと。

 5月28日にアップルから、「iPad」が発売されました。早速、私もその力を試してみたくなり、購入しました。以前、4月7日のこのブログで、代替手段を用意することの大切さをお話ししましたが、この製品こそまさに私たちのような読み書きが困難な人達の代替手段としてうってつけのものです。
 既に「iPhone」にもあるのですが、「アクセシビリティ」という機能が基本設定に入っています。この中に「ヴォイスオーバー(画面上の文字を読み上げる)」や「ズーム(画面の一部を拡大する)機能」「黒地に白(文字を白抜きで表示。写真参照)」等、読みやすい機能があります。これは本当に助かります。情報保障という観点から言えば、ディスレクシアの人だけでなく、高齢者も含む様々な「読みづらさ」を感じている人にとって、画期的なものだと感じます。
 従業員全員に「iPhone」を導入し、障害者雇用における支援機器として、いかに活用していくかを真剣に模索している企業もあるようです。



不登校の気持ち

 私は、高校を3回替わり、4校目で卒業しました。その時の詳しい話をさせていただきます。今では、高校(全日制、定時制、通信制)を転々としたことは、過去の笑い話としてすることができますが、当時、編入、転入というのは、簡単なものではありませんでした。親の仕事の都合などで、転校した経験のある方もいると思いますが、活動の場所を替えると、ゼロから、様々なものを新たに作り上げていかなければなりません。特に「人間関係」を築くのには、環境に慣れるための力、友達を作るために話をする力など、相当な「体力」「知力」を必要とします。



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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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