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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

心の超回復

 これまでの内容は、全体を通すと発達障害をもつ者が直面する「厳しい現実」を読者のみなさんに突きつけてきたと思います。しかし、今回は、このあたりで一度、クールダウンの時間にしたいと思います。

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 まず、知っておいていただきたいのは、私は「悲劇の人」ではないということです。もちろん、辛いことは沢山ありました。誰からも理解してもらえず、路頭に迷ったような状況になっていました。

 しかし、だからと言って、先生達や大人、仲間を恨んでいる、憎んでいるということはありません。もちろん、心ない人もいました。でも、それは現在の自分に大きく活かされています。なぜなら、「そんな風に接しられたら、困るよ」ということを自分の体験を通して、伝えることができるからです。だから、無駄なことじゃなかったんですよね。

 例えていうならば、筋肉トレーニングと同じです。筋肉トレーニングでは、高負荷を筋肉にかけることにより筋繊維が傷つけられます。そして、それが回復した時、傷つけられる以前よりも太く再生されます。この現象を「超回復」と言います。超回復を促すためには条件があります。それは「休息と栄養」です。個人差はありますが、2日から3日ぐらい必要といわれています。もし、休息せずに毎日トレーニングを続けると、傷ついた筋繊維が回復する前にさらにダメージが大きくなり、発達どころか逆に減退してしまいます。

 これは、子ども達の心に似ています。つまり、傷つくことは悪いことばかりではありません。でも、日々傷つけられたら、ダメージが大きく、モチベーションは下がり、発達にも影響が出てしまいます。人によっては、フラッシュバックの原因にもなり、本人を苦しめ続けることになります。

 ここで大切なのは、「心の超回復」を促すためには、「心の休息と栄養」が必要だということです。できないことが多い子どもに対しては、「もっと、できるはず」という過度な期待を持って、大人は接することが多いと思います。しかし、長いスパンで考えたときに、「休息」は「怠け」でなくて、「発想の転換の時間」であり、「栄養」はできたことを「しっかりと褒められること」なのです。
 本人は、本人なりにがんばっています。でも、どうしても、できないこともありますよね。だからこそ、スモールステップでも褒めることを大切にしてあげてほしいんです。

 そして、「未完了」を「完了」にすることが重要です。作業の途中で、「自分がやった方が早い!」と思い、周りの人達がありがた迷惑で、やってあげちゃうことってありますよね。でも、本人の中では、「自分でやり遂げた」という感覚が育たないまま、成長する可能性があります。だからこそ、多少スピードが遅くでも、自分の力で「完了」させてあげることが、セルフエスティームの向上に繋がります。


コメント


 アスペの娘は学校が休みになるたび、身体と心のリズムがずれてしまい、フラッシュバックや一定のこだわりに囚われ続ける症状が表面化しますが、心の超回復という考え方は前向きでいいですね。
 人間には代償機能があるとされていますが、発達障害の人々にも、その人なりに代償機能があって、もちろん娘にもあって、親の私にもあるんだと思います。
 傷ついただけ強くなり、太くなり、折れにくくなる。障害の有無に関わらず、当事者も親も学校も地域も、それぞれお互いにお互いの生きる力を代償しあって生きていく。
 そんな社会を強く望みます。


投稿者: ぷるっち | 2010年05月06日 16:41

 ぼくは統合失調症でADHDですが、傷ついたら自己評価が下がる、自信がなくなるように感じています。時間がたち、傷も癒えてしまえば、以前のように活動できるのですが。発達障害のある人は傷だらけだったりすると思います。


投稿者: 佐野 | 2010年05月06日 20:56

ぷるっちさんへ

 本当にそう思います。人それぞれ、「自己治癒力」は持っているのだと感じています。
 ただ、やはり、それなりの相互作用が必要だと思います。一方的なものだと、バランスを崩してしまいますので、そうやって、「互い」に太く、しなやかに育っていくことが大切だと思います。

佐野さんへ

 確かに傷ついたら自己評価は下がり、自信はなくなってきますよね。。
 そうなんです。発達障害のある人は傷だらけだったりすると、私も痛感しています。
 だからこそ、啓発活動の活発化、支援体制の充実等を日本全土に訴えていく必要があると感じています。


投稿者: 南雲 明彦 | 2010年05月08日 16:47

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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