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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

文字を読むことが不可欠とされる学校教育と現代社会

 前回までは、自己紹介も含めて発達障害について大まかに説明をしてきました。今回からは、私自身の生い立ちや発達障害をめぐるさまざまなテーマについて、すこし深く語っていきたいと思います。

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 今回のテーマは「文字」です。これは生きていく上で、切ろうとしても、なかなか切り離せません。特に今年は、「国民読書年」。キャッチフレーズは、「じゃあ、読もう。」となっています。この「じゃあ、」と、本を読めないのがディスレクシアの人達です。読書は、人生を豊かにし、人格形成に大いに役立つのは間違いありません。しかし、文字を読むことが難しい場合、本からの恩恵をあまり受けることができません。

 学校では、先生に「ちゃんと、読もう」と言われました。よく、「文字の読み書きができなくても、他の個性があれば大丈夫」とポジティブな発想をする人もいます。しかし、教育を受ける上で、「文字を読むこと」は、必須事項です。授業というのは、そのほとんどが読み書きの時間だったはずです。それが上手くできないとなると、ひたすら、物思いにふけるくらいしか、できることがなくなります。発達障害をもつ人達に共通していることだと思いますが、「みんなと同じようにできない」ということは、大きなストレスを生む原因になります。それが積み重なって、「二次障害」を引き起こしてしまうのです。

 ここで大切なのは、周りの大人が代替手段を用意することで改善されることがあります。しかし、それがあまり知られていないのが現状です。
 例えば、役に立つツールとして、「DAISY(ディジー)」があります。特に、マルチメディアDAISYはディスレクシアの人には有効で、パソコンにソフトをインストールして使い、文字を読み上げた音声データと画面上の図や絵、読んでいる箇所をわかりやすく指し示してくれる文字を組み合わせて利用するものです。
 詳しくはDAISYの紹介サイト( http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/index.html) をご覧ください。

 DAISYは視覚障害者のほかに学習障害、知的障害、精神障害のある方にとっても有効であることが国際的に広く認められてきています。アメリカやスウェーデンの録音図書館などではディスレクシアへの録音図書のサービスが行われています。日本で「DAISY」は、一部の「読みに困難のある人」にしか適用されていません。それを打開するべく、「読書バリアフリー法」を成立するために、動き始めている団体があります。しかし、残念ながらこうしたツールの存在は一部の支援に関わる人々のみに知られているのが現状です。

 この動きは、ディスレクシアの人だけ恩恵を受けるのではなく、障害者や高齢者の読書環境を総合的に改善し、全ての国民が等しく読書に親しめるような環境を整備していくことになります。これは障害者の自立と社会参加を促進し、高齢者の文化的な生活を保障することにもつながります。
 
 ディスレクシアの人たちが同じスタートラインに立つためには、障害の理解だけではなく、こうしたツールとそれを誰でも利用できるための法整備が必要不可欠です。


コメント


 まさか、こんな有名なおかたから返事が来るとは思ってもみませんでした。びっくりしてしばらく放心状態でした・・・南雲さんは忙しいおかたなのに・・・
 他のブログを拝見し階段から落ちて骨折した事を知り現在快復された御様子で安心しました。今働いている施設の利用者に階段から落ちて(脊損)四肢麻痺の利用者がいます。打ち所によってはそんな体となってしまうため気をつけてくださいね。南雲さんは国民の救世主なる方で大事な体ですから。
 私はこれからも南雲さんのブログを楽しみにして仕事*顔晴ります*


投稿者: cobacchi | 2010年04月08日 23:18

cobacchiさんへ

こちらこそ、コメントを頂き、感謝です。
そうなのです。2月末から1ヶ月間ほど、腰骨を折り、入院しておりました。

しかし、この経験はとても貴重なものでした。看護師の方々と日々お話しする中で、やはり、「発達障害」の認知度は低いです。しかし、入院患者の中には、これを持ち合わせている事は必ずあります。

だからこそ、自分がどこにいようが何をしていようが、”知るきっかけ”をお届けしたいと思っています。

いつも、お読み頂き、ありがとうございます。


投稿者: 南雲 明彦 | 2010年04月10日 20:53

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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