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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

私の生い立ち

 前回は「ディスレクシア」がどのような障害かということをご説明いたしました。今回は私の生い立ちについて大まかではありますが、書いてみたいと思います。

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 私が自分のことを「ディスレクシア」だと知ったのは21歳の時です。

 私は、小学生の頃から「文字の読み書き」がどうにもうまくいかないと感じていました。黒板をノートにうまく写せず、教科書や本をスラスラ読めないのです。

 そして、学年が上がるごとに、どんどんと周囲の子どもたちとの間に差がついていきました。しかし、当時は「ディスレクシア」という言葉すら知りませんので、自分でも単なる「努力不足」と考え、必死で読み書きの反復練習をしました。しかし、やはりどうやってもうまくいきません。その自覚が出始めたのが、10歳くらいの時でした。

 私は自分なりにどうしたらよいかを考え、ある時から「ノートを取らない」作戦を取ることにしました。黒板の文字を写すことに集中してしまって授業内容が頭に入らないのであれば、「目」と「耳」だけで学習しようと考えたのです。この学習方法で中学校までは何とか勉強についていきました。むしろ成績は学校でもよいほうで、高校は地元の進学校に入学しました。しかし、高校に入った途端に勉強のレベルが上がり、「目」と「耳」だけでは上手くいかなくなってしまいました。先生からも頻繁に「努力が足りない」としかられるようになりました。

 人には、自分ではどうにもならないことって、ありますよね。それなのに、周囲から「頭が悪い」「努力が足りない」などと言われ続けたら、どうなるでしょうか? 

 私はついに高校2年生の時に不登校になります。そこから、「うつ」「自傷」が始まり、精神病院へ入院もしました。「なんで、自分は皆と同じように本が読めないんだ!」といつも叫んでいました。そして、状態は悪化し続け、幻聴まで聞こえるようになりました。いわゆる「二次障害」の始まりだったのです。

 高校を全日制から定時制に変えたりもしてみましたが、その頃には対人恐怖で電車にも乗れず、また不登校になります。さらに強迫性障害で一日4時間の手洗いの日々が始まりました。

 今度は、通信制高校に通い始めたのですが、状態が著しく悪く、勉強すらできない状況でした。アルバイトもしてみましたが、いじめに遭い、それがきっかけでアルコール依存にもなりました。

 その後、ある女性カウンセラーとの出会いによって、復調の兆しが見えることもありました。しかし、また仕事を始めようとすると、そこでは「読み書き」が求められ、上手くいかないとまたいじめに遭いました。負けるわけにはいきませんでしたが、どうしようもない「読み書き」を責められては、何も抵抗することができなかったのです。

 路頭に迷うような日々が続いていた時に、ふとしたことがきっかけで参加したNPO団体で、初めて「ディスレクシア」を知ることになります。これが、人生の転機になりました。

 しかし、自分の障害を知ったのはいいですが、日本では「ディスレクシア」を知っている人は皆無に近かったのです。これではいけない……と思い、私は啓発活動に立ち上がることになりました。

 次回は、「二次障害」について、書かせていただきます。


コメント


 アスペルガーの本、ADHDの本は最近増えてきましたが、ディスレクシアの本はなかなか見ません。当事者の書いたものは貴重だと思って、読ませてもらっています。楽しみにしています。


投稿者: 佐野 | 2010年03月20日 19:24

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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