察しあえる関係っていいな…
最近、ボランティアの学生さんや実習生が私たちのところに訪れています。この小さな事業所(デイホーム)に訪れる理由は、みなさん「必察」を体感したいということのようです。私たちとしても、来訪者は新鮮な風を吹かせてくれて、新たな気持ちになる良い機会だと考えています。
今回の実習生は、仕事をしながら社会福祉士の通信過程を受講している、とても熱意のある頑張り屋、現役バリバリ専門職のAさんです。もともと看護職として、医療・看護現場で活躍してきたAさん。地域の中で生活している患者さんたちをサポートする中で、より生活に密着した視点での生活支援をしていきたいと考えたところ、あらためて「社会福祉士」という資格をとることで、多くの福祉的な視点を学び、今よりも地域で生活する患者さんたちのサポートができるようになりたいと考えたようです。
そして、患者さんたちが今以上に納得のできる生き方と活き方、そして逝き方に寄り添うことができたらと考えていました。
実習初日は、慣れない環境の中で必死に雰囲気にとけ込もうとする姿勢や、職員の動きを真剣に見つめている様子がみられました。「そんなの実習生だから当たり前」と思う人もいるでしょう。でもAさんは、経験豊かなベテラン専門職で、自分の職場では役職もついている方です。そのAさんが、初心の姿になって実習に取り組んでいました。そこまで活躍してきた方が、あらためて実習生として学んでいくという姿勢は、なかなかまねできないことではないでしょうか。
そのようなAさんの取り組みの甲斐あって、デイホームに集う仲間たちは、Aさんが以前から一緒に居たかのような振る舞いになっていました。それは、Aさんの屈託のない前向きな姿勢と、「相手の思い」を必察していこうとする姿勢があったからではないかと思います。
Aさんは常に「どんな話題を取り上げたら、相手が興味や関心を示すだろうか」と相手が安心する事柄を模索しつつ、そこに「専門職のやり甲斐」を見出していたのです。決して相手のためだけではなく、自分たちのことも大切にしながら関係性を育むことで良好な関係ができるのだと、Aさんの姿勢からあらためて気づかされました。
14日間の実習を終えた数日後のこと。Aさんが自習ノートを提出しに来たとき、デイホームのスタッフが、その日集っていた皆さんに「Aさんがお見えになりましたよ」と伝えました。
やや元気のなかった花子さん(86歳)に向かって、「花子さん。Aさんが遊びに来てくれましたよ」と言うと、「あっ、そうかい」とやや調子が低下している返答。そこでスタッフがAさんに合図をすると、Aさんはすぐに「富士山の歌をうたいましょう」と言ってくれました。実は花子さんは、富士山の歌ならよくご存じで、この歌を歌うと元気が出てきて笑顔を見せてくれることが多かったのです。
そんな花子さんの思い、そしてスタッフの思いも察して、Aさんは「富士山を歌いましょう」と言ってくれたのです。そして、みんなで声をそろえて「富士山」を歌いました。温かい視線が花子さんに向けられ、みんなから笑いがこぼれました。思いを察しあえる関係っていいな……とあらためて思いました。
Aさん。必察の仲間として、今後もともに活動していきたいですね。これからもよろしく!
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