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永島徹の「風」の贈り物

相談者の思いを必察

 私たちの仕事は、介護者からのご相談を受けることから始まります。介護者の多くは親族。電話での問い合わせもあれば、突然の来訪もあります。初対面の介護者は、どのような思いで相談に至っているのでしょうか?

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 「介護が大変になってきたから…」
 「なかなか自宅ではみられないから…」
 「早めに手続きをしておいたほうがよいから…」……
 相談者は、答えを早く求めたがることが多いです。けれども、すぐに解決できることもありますが、そうでないことが多く、いつ終わるか分からない介護生活に疲労困憊していることもしばしば。そのような介護者たちが相談する背景を、私たちは意識して必察しているでしょうか?
 突然の電話や来訪で
 「いま、ちょうど忙しくて、手が離せないのに…」
 「今日はスタッフが少なくて、とても相談者の対応ができないよぉ…」
 「何を希望しているのか、相談の内容がわからないなぁ。忙しいのに困ったなぁ…」……
 このような思いをしたことが何度かある専門職も少なくないでしょう。けれども私たちの仕事は、相談で始まり、その最初の相談が大切なことを改めて考えることも必要です。
 相談者が相談に至るまでにどれだけの時間や経過を経ているか、想像してください。市区町村の行政から発行される広報誌には「介護のご相談は、○○地域包括支援センターへ」、民間などの広告チラシには「介護のご相談を受けています。お気軽に相談してください」というキャッチコピーのようなものもあります。
 これは、相談窓口として相談者が緊張しないようにという配慮だと思います。けれども、何もわからず、ただひたすら介護をしてきた介護者にとって、専門職へ相談するということは「何かいろいろと指摘されたらどうしょう」「どんなふうに相談したらよいかわからない」「家族のことをさらけ出してしまうことは、世間体もあるし…」と躊躇してしまいます。人に簡単に、しかも「お気軽に」という気持ちで「相談」することは難しいのではないでしょか? そのため相談者は、知人から情報を得たり、介護経験者の様子を伺ったりして、決死の覚悟でようやく最初の相談をしてきます。中にはそうでもないような、大分慣れた問い合わせもありますが、そのような方はさまざまな所に相談したり、見聞きしていてるうちに、相談の要領をつかんでいる相談者でしょう。
 いずれにしても、私たち専門職は、相談面接という仕事をていねいにしていくことが求められます。その相談者の思いにある背景を必察し、今どんな思いでいるのかというところから、次に相談内容の整理や解決方法に結びついていくのでしょう。たった一度の相談でも、誠意をもってかかわらせていただくことが、相談者のみならず、相談者の傍らにいるサービス利用者の生活支援の始まりになることを忘れたくはないですね。そこに私たち専門職の価値もあるのです。そしてこの積み重ねが、ゆくゆくは皆さんの所属する事業所の評判となってかえってくるでしょう。
 何気ない相談でも、できる限り必察していきたいものですね。


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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著者:永島徹
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