予防接種の季節~Around90!? たくましき女性たち
最近、不覚にも風邪をひいてしまい、いつも世話になっている医師に診察をしてもらいに行ったときのことです。
この日の私は、年末なってくるこの時期に、体調不良は仕事にも影響するので、すぐにでも対処したいと必死でした。田舎道沿いにあるクリニックに近づくと、ヨロヨロと自転車に乗った円背気味の高齢の女性が必死に走っていました。「気をつけないと危ないなぁ」と見守りつつ考えていました。
そして私は、クリニックの駐車場に車を止め、待合室へ向かいました。時間は夕方。待合室にはいつものように、多くの患者さんが静かに待っていました。私もその1人となってイスに腰かけて待っていると、先ほどヨロヨロと自転車に乗っていた高齢の女性が入ってきました。すると、この静かだった待合室が、次第に近所の集会所に変容しはじめたのです。
高齢の女性「あれ~、あんたはゆみちゃんじゃないかい?」
ゆみちゃん「はぁ。あらやだぁ、かっちゃんじゃないの! 久しぶりだね! 今日はどうしたんだい?」
かっちゃん「はっはっ、やっぱりゆみちゃんけぇ~っ。私はヨ、今日インフルエンザの注射だよ。ゆみちゃんは、どうしたんだよ」
ゆみちゃん「私も、インフルエンザの注射だよ。やっぱり早いうちがいいからねからね」
かっちゃん「そうだよねぇ。そんでぇ、今日は何できたん?(交通手段のことを聞いている)」
ゆみちゃん「私はいつもは車で嫁に送ってきてもらっているんだけど、今日は天気もいいし自転車できたんだよ」
かっちゃん「やっぱりそうかい。私もそうなんだよ。天気が良いしね。あっはっはっ。あれ~、あっちにいるのはよしちゃんじゃないけぇ?」
ゆみちゃん「あっそうだよ! あらっ気づかなかったよ。よしちゃんだよ」
すると、長椅子の隅に座っていたそのよしちゃんらしき高齢の女性が振り向き、満面な笑みを浮かべてこの会話に入ってきました。3人寄れば、さらに会話に拍車がかかり、ついには、待合室にいた私たちは、この3人が未亡人であることや、普段は農作業をしていること、お互い90歳になっていること。今日は3人ともインフルエンザの予防接種をしにきたなど、その様子がよく理解できるようなリアルな会話を、大きな声でパワフルに話していました。
このパワーに圧倒されながら、他の待合室の患者と目が合うと「そうだよねぇ~」と会話の内容に同意を求めてくるという始末。圧倒されっぱなしである私がそこにいました。
そうこうしているうちに、予防接種の説明に看護師が登場。諸注意事項の説明をうけ、その内容の一部に「ご高齢の方が接種した場合、万が一、肺炎などを併発し死に至ることも…」という文句がありました。
真剣に説明を受けていた3人は口々に「やっぱり、インフルエンザはおっかねぇなぁ」と言いつつ「だから、先生のところで注射をするんだよぉ」と、看護師の説明とは違った理解をしているようでした。
私は、このような会話ができて日々精いっぱい生活(いき)ているこの大先輩の3人の女性に脱帽でした。容姿は歳なりに老いているものの、目の輝きや表情には老いの貫禄があり、この地域を築いてきた底力を感じました。私は、風邪をひいていられないということはもとより、逆にこの先輩方にから元気をいただけたようです。そして、地域のなじみあるつながりを垣間見る心温まるひとときでした。
尊敬の念を込めて「あっぱれです、Around90!」
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