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永島徹の「風」の贈り物

新たな生活を育むサポート

 最近、成年後見など権利擁護についての講話や相談の依頼が多くなってきました。生活をしていく上で、安心した生活を営みたいと誰もが願うことですが、さまざまな諸事情でどうしても公的なサポート(成年後見制度など)を活用せざるを得ないのです。
 私も成年後見人、保佐人として数件サポートさせていただく仕事をしています。特に新規でかかわらせていただく場合、本人のこれまでの生活(いき)てきた歴史についてていねいに必察していきます。人との関係や住んできた地域との関係、そしてそこから本人の「大切な思い」について察していきます。

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 現在入院中の太郎さん(仮名)の住まいを拝見(動察)しに伺った時のことです。
 一人で何十年間も生活してきた住まい。以前はすっきりとした佇まいであっただろうその家は、雑草だらけになっており、庭にある小さな池にはボウフラが浮いていました。玄関に入ると、夏期の暑さによる何ともいえぬ臭いと暑苦しく澱んだ空気。乱雑に置かれ、ほこりにまみれている日用品。足の踏み場もない家内の様子を表面的にみただけでは、「とても生活できる環境ではない」と思いこんでしまう状況。
 しかし、ていねいに必察していくと、几帳面だったといわれていた太郎さんが、混乱しながらも必死に生活(いき)てこられていた様子が見えてきます。音楽を愛し、自身も楽器を使いこなしていた太郎さん。ある部屋だけは整然と整理され、いすや足台、年季が入った楽器がケースに保管されていました。そして、静かに立っている譜面台には、日に焼けた手作りの楽譜集が置かれていました。太郎さんは、どんな曲を、どんな思いで弾いていたのだろう…。その場所での必察で、太郎さんの大切な生活(いき)る思いが伝わってくるようでした。
 これからも太郎さんの生活は続いていきます。生活の場所や環境が変わっても、変わることのない太郎さんの生活(いき)てきた思いを大切にしながら、私もサポーターの1人として、新たな生活を育むお手伝いを続けさせてもらいたいと思っています。

最近の成年後見制度についての情報
裁判所ウェブサイト


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

【永島徹さんの最新刊】
『必察! 認知症ケア 思いを察することからはじまる生活ること支援』
著者:永島徹
定価:¥1,890(税込)
発行:中央法規出版
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