認知症ケアを入り口に、地域ふくしを考える
法人格をとり、認知症に関する活動をしてきて6年になりました。
活動当初、今の拠点である栃木県佐野市(旧田沼町)には、認知症に関する介護サービスがない状況でした。当時は、毎月のように認知症ケアに関する医療・保健・福祉などの講師をお呼びして連続講座など開催したり、時には、多くの方や関係機関の協力のもとに、長谷川式スケールで著明な長谷川和夫先生や、認知症高齢者の生活支援をどう支えていくのかという実践取材をされてきたNHKの元解説委員小宮英美さんをお呼びした研修会を実施してきました。
そうこうしている6年という間に、認知症に関するさまざまな取り組みが全国各地で展開され、地元佐野市でも、認知症デイサービスが多くなりました。
ただ、認知症ケアなどについて取り組みをしていこうとする機運が高まる反面、「認知症のことばかりやっていられない」というご意見を伺うときがあります。偏った取り組みは確かに懸念されます。しかし、認知症に関する対策を考えていくことは、単純に認知症という範囲に止まるものなのでしょうか?
認知症の方を支えていくネットワーク・連携などに秘められる力は、さまざまな生活支援に役に立つ効果があると思います。認知症高齢者の見守り一つとっても、それを応用することで、虐待に関するサポートや不審者への対応という防犯対策の検討にもなります。
つまり、私たちの生活全般でさまざまな支え合いを見直し、新たな関係性を育んでいけるきっかけになると思うのです。
改めて、皆さんの周りを見回してみてください。本当は誰もが病気になりたくない、認知症になりたくないといっても、身近な方々や大切な人が認知症という病に罹ってしまったことを経験している方も少なくないと思います。それだけ身近に起きていることなのです。それゆえ、そこからはじめてみることが誰にとっても必要なことだと思うのです。
去る6月30日、「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の第4回目の会議が行われました。プロジェクトで検討された内容が、7月11日に報告書としてまとめられました。
そこには、具体的な対策として5つ掲げられています。その内容はとても必要なことであり、早急に取り組まなければならないでしょう。認知症の方の「生活」を支えていくための土台をつくるきっかけになると思います。そして、決してぶれてはならないことは、当事者やその傍らに寄り添う家族などの「生活」をサポートする視点ということです。
それは、ともすれ制度・システム・ネットワークというと「これは一体誰のためにできたのか」と首をかしげる時があります。制度のための制度でもなく、専門職のためのものでもない。認知症になっても必死に生活(いき)ることを続けている方をサポートするためでしよう。この取り組みは、難しく大変なことかもしれませんが、「理想だ」として考えてしまうか、「できることからコツコツと」考えるかは、私たち自身、一人ひとりに委ねられるでしよう。
私は、できることからコツコツと考え歩み続けたいです。そして、同様の思いで取り組まれている方々の思いという「点」と「点」が「線」になり、いずれは色とりどりのパッチワークされた地域社会(面)が育まれていくのだと信じています。
「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」報告書
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