突然変わる「今」をいきる
先日、仕事を終えて家族で書店に出かけました。
平日の夜ですが、時間があるとよく行く場所です。私の目的は、今回から「認知症編」がスタートする『ヘルプマン』。失見当、記憶障害など認知症の症状により、自分がどこにいるのか、何をしているのか、自分がいったい誰なのかわからなくなる不安、混乱。暗い闇の中で突き落とされるかのように、読んでいた私も、何とも言いようのない思いになりました。
そして、デイホームのお仲間きよ子さん(仮名)のことを思い出していました。きよ子さんの現実が「ヘルプマン」に描かれいる、そう感じたからです。
きよ子さんは77歳。アルツハイマー型認知症と診断されて、5年以上が過ぎています。きよ子さんにはお子さんもお孫さんもいますが、お孫さんのことを「あら、かわいいお子さんね。どこの子?」とおっしゃいます。
デイのみなさんと、結婚したころの話をして「きよ子さんもいろいろ大変でしたか?」などと伺うと、「あなた何言ってるのよ。私はまだ、結婚なんてしてないわよ」とおっしゃることもあります。
若い男性を見て少女のようにはにかんでいたかと思うと、そう時間が経たないうちに、「うちの子、やんちゃでね」と、子育てで忙しい頃のきよ子さんになったりします。これまで生活(いきて)きた時間を、複雑なコースのジェットコースターに乗って行ったり来たりするかのように、きよ子さんにとっての今が変わっていきます。何が現実なのか、本当の自分は何なのか…。
きよこさんは、いったいどんな思いでこの5年以上の間生活(いきて)こられたのだろうか…。
アルツハイマーという診断を受けた直後、きよ子さんは、家中の物をこわすほど荒れたそうです。
「病名を告げた医師のあまりに淡々とした言葉に、悔しくて、悔しくて、気持ちが収まらなかったのでしょう」
息子さんはそう話してくれました。現在のきよ子さんからは、その頃の荒れている様子は想像できません。突然変わる今を生きながら、きよ子さんの表情からは、不安や恐れではなく、安心、穏やかさえ伝わってきます。それはきっと、突然変わる今、何が本当なのかわからない不安な状態を支えてくれる家族の存在があったからだと思います。
「お父さん、ちょっと手伝ってちょうだいよ」というきよ子さんに、「ちょっと待ってろよ。今やるからさ」。「かわいいね。どこのお子さん」というきよ子さんに、「かわいいだろ。誰かに似てないか」と返す息子さん。
母であるきよ子さんが今まで感じてきた苦しみ、悲しみ、怒り、諦め……さまざまな思いをわかり、今を生活(いき)ようとする彼女の思いを察することのできる家族だからこそできるかかわりです。認知症とともに、生活(いきる)ために必要なかかわりです。
コメント
そうですね、突然変わる「今」を生きている
そんな方、いらっしゃいますよね。
<突然変わる今を生きながら、きよ子さんの表情からは、
<不安や恐れではなく、安心、穏やかさえ伝わってきます。
<それはきっと、突然変わる今、何が本当なのかわからない不安な状態を
<支えてくれる家族の存在があったからだと思います。
すてきなご家族に囲まれたきよ子さん、その人を取り巻く環境って、本当に大切ですよね。
中核症状と周辺症状ということばがありますが、発達障がいなどでは2次障がいで苦しんでいる人たちがたくさんいます。
環境、特に人のかかわりによってつくられる新たな障がい、その人を理解して受けとめていく人と場が必要ですね。
今日は土砂降りの雨、この雨の中、送迎車は走る。
安心できる居場所へと誘うために…。
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