ヘルプマンはどこに……
お年寄り一人ひとりと、もっともっと向き合う時間がほしい。でも現実は、限られたマンパワーで、記録や食事、入浴、排泄などの介護に追われている。話をしていれば「何やってるの。時間がないんだからさっさっと仕事して」そんな声が飛んでくる。
私たちの仕事、私たちの役割っていったい何なんだろう…?! 実際にやりたいことと現実のギャップに、心も身体も疲れ果ててしまう介護職は少なくありません。
そんな燃え尽きてしまいそうな介護職も、ぐっと惹かれれる漫画の主人公がいます。『ヘルプマン』(講談社)の恩田百太郎と神崎仁です。
百太郎は「じじ」「ばば」の思いとまっすぐに向き合い、思いを支えていくことに体当たりで挑戦しています。そんな百太郎の様子を、時にあきれたように見ながら、着々と資格をとり、百太郎とはちがう形で挑戦を続ける仁。
この二人(特に百太郎)の行為は危なげで、現実には考えられようなことかもしれません。それでも、そのかかわりによって息を吹き返す「じじ」「ばば」の姿に、読む人は感動を覚えます。こんなにもこの二人の『ヘルプマン』に惹かれるのは、自分たちがなりたいヘルプマンの姿を、二人にみているからでしょう。
そんな『ヘルプマン』の著者くさか里樹さんと、担当編集者の鹿島さん。先日、お二人が佐野に来られ、風の詩に寄ってくれました。朝一番の飛行機で高知からいらしたくさかさん。とてもエネルギッシュなお二人は、疲れた様子も見せずにカメラのシャッターをきり、私たちの話に耳を傾けてくれました。
「ヘルプマン」って一体?! どんな人(職種)がどんな役割を担っていくことなのか…?! 今の介護・福祉制度の中で、職種や資格から考えていたらみえてこない「ヘルプマン」の姿を、くさかさん、鹿島さん、そして私と風の詩のスタッフとで話をすることができました。
話し合いを通して「この職種の人がこういう役割を担うこと」という決まった答えがないことを感じました。たとえば、Aさんというお年寄りにとっては、少し離れた所に住む娘さん、昔からのともだちBさん、時々様子を見に来てくれる民生委員さん、頼んだものを届けてくれる商店街の人…みんながAさんの生活を支えてくれるヘルプマンです。
専門職だけがヘルプマンだと思い込んでいたら、私たちは地域にあるたくさんのヘルプマンの力を見失ってしまいます。そして、自分たちだけでなんとかしようとして燃え尽きてしまうのです。
自分たちだけがヘルプマンではない。そのことを私たち専門職は忘れちゃいけない!! 自分もヘルプマンの一人として、地域社会のさまざまなヘルプマンの力を育み、つなげていくこと、それが専門職の役割だと思います。
『ヘルプマン』という作品を通して、たくさんのヘルプマンを育くんでくれているくさかさんらも、間接的にお年寄りの生活をサポートしてくれる「ヘルプマン」です。
私たち一人ひとりが「ヘルプマン」。私もヘルプマンの一人として、百太郎や仁に負けずに、「ヘルプマン」の可能性を広げていけるようにがんばるぞ!!
くさかさん(前列左から2人目)とヘルプマンたち
コメント
くさかさん、2年前のケアマネジメント学会でお会いしました。魅力的な女性ですね。
「ヘルプマン」某大学の福祉の先生の選定図書になっています。わたしも、グループホームのリーダーや精神科の看護師に紹介したら、さっそく全9巻を購入して、スタッフで回し読みしてます。なんて報告が来ています。
本日は、県の集団指導、お疲れ様でした。
ケアマネジャーとして、ほんとのヘルプマンになっていくために、もっとご利用者さんに寄り添い、共に生きていくことの体験を共有して、その人らしい自立支援のケアプランを作成して支援していきたいのに、PC相手の書類つくりに時間をかけて、法令順守に務めていくことが、この制度上のケアマネジャーとして、生き延びていくことになるのかな?! と、漠然とした疲労感と危機感と空虚感が残りました。
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