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永島徹の「風」の贈り物

何が本当の社会問題!?

 かつての社会では、介護は家庭の中のものでした。各家庭では同居家族が多いこともあり、その中には介護を担える機能があったと思います。
 しかし今の社会は、核家族化や女性の社会進出がすすみ、家庭の中の介護力が弱体化しています。介護はすでに、家族だけで担うことが困難になり、社会でその対応を考えていかねばならない大きな社会問題の一つとなりました。
 そこで、介護を社会全体(国民の協同連帯の理念に基づき)で担うしくみとして作られたのが介護保険制度です。
 しかし一方で、そこで働く介護職の離職率の高さが深刻となっています。その理由としては、肉体的負担の大きさや給与の安さが上位に挙げられているようですが、では、夜勤の回数が減ったり、休みの日や給料が増えれば、離職率は低くなるのでしょうか!? 私は、そうはならないのではと思っています。それどころか、少しでも条件の良い職場を求め、短期間で介護現場をぐるぐる渡り歩く専門職がさらに増えるのでは!?
 いずれにしても、介護は人と人とのかかわりで成り立つものです。サービスを提供するしくみが作られ、建物が作られても、そこで働く人がいなければ何の意味もありません。

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 そこで、昨今のニュースでも取りざたされているのが、この不足する介護のマンパワーを外国に求めようという取り組みです。現実的には言葉の問題や文化の違いなど、外国人介護職が日本で介護を担うにはさまざまな苦難が予測できます。
 私は、学ぶ姿勢や力があり、介護という仕事に対する高い志がある人ならば、外国人にも、日本で働ける機会を広げていくことはよいことだと思います。日本人であっても、言葉の使い方を知らなかったり、自分と違う世代の人の価値観を理解できずに相手を傷つけたり、怒らせてしまうことは少なくないのですから。
 しかし、日本人による介護の担い手が不足するからといって、安易にそれを補うマンパワーを他の国に求めるということには問題があると思います。それは、「都合の悪いことは他人任せ、そして何かあったらすべてその他人のせいにする」そんな、人として望ましくない方法で、他国の人まで無責任に巻き込んでしまうことになるのではと思うからです。
 国際親善という見方もあるようですが、それならばなおさら介護現場が、「日本人がぜひとも働きたい」と思える魅力ある職場になってからにしてほしいと思います。そうすれば日本人も外国人も、介護職として誇りをもって、良い意味で競い合いながらともに学び、専門性を高めていけるのではないでしょうか。
 今の状況のままで外国人介護職の受け入れをすすめていけば、日本人が行った行為でそれほど気にならないことでも、「やはり外国人だから…」と嫌なムードになりかねません。
 人は本来、支え合って生きるものです。それができるからこそ、人なのだと思います。そして、介護は互いに支え合い「生活」するという、社会の中で生きる人間としての基本となる行為です。
 支え合うためには、自分のことだけでなく他人のことを考え、思いやることが必要です。少子高齢の問題、介護の問題、そして今注目されているさまざまな社会問題の最も根底にある、本当の社会問題は、他人のことを思いやることができない人が増えすぎてしまっているという、人としてのありかたそのものに関することなのではないでしょうか?
 この問題は、介護サービスの量を増やしても、施設を増やしても、介護のマンパワーを増やしても、根本的な解決にはなりません。私たち一人ひとりが、生きるということはどういうことなのか(かなり重いテーマだと感じるかもしれませんが、大切なことです)をしっかりと考えていける力が大切です。
 ソーシャルワーカーとして地域の中で活動しながら、本当の社会問題は、今を生活(いきる)私たち自身の中にあるのではと考えさせられる日々です。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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