熱く語り合える仲間を…
先月末、社会福祉士国家試験が行われました。今年も約4万5000人以上の受験者がその日のために、日夜受験勉強に取り組まれたことでしょう。
私も毎年この時期になると、自分が受験した時のことを想い出します。学生の時に、私の一つ先輩から社会福祉士の試験がはじまりました。資格ができて第2回目の試験を受けることになった私は、「資格をとっても何か得なことはあるのか?」などと屁理屈を言いながら、受験勉強もまともにせず、挙げ句の果てには試験会場でウーロン茶のペットボトルをがぶ飲み。試験最中、トイレに行きたくなり、冷や汗をかきながら解答用紙にチェックを早々に済ませました。結果は当然、撃沈です。
その後、青森県の福祉関係の施設で働き4年が過ぎ、郷里である栃木県に戻ることを考え始めました。そんなとき、郷里のある方から「無印では、どこにも紹介できないなぁ」という一言。一大決心をし、働きながらの受験勉強。早朝から帰宅後の時間、そして仕事の休憩時間にもコピーしたプリントを見ながらという始末。まともに「勉強」をしてこなかった私にとっては、恥ずかしながらこんなに勉強したのは初めてでした。
その結果、自分で言うのも何ですが、見事安全圏内で合格しました。当時栃木県には、社会福祉士が約50人程度しかいなかった時代です。「社会福祉士」というだけで、就職先もすぐに見つかるだろうと考えていました。ところが、現実はそうは甘くない。
今よりも、もっと「社会福祉士」という資格が知られていなかった当時では、どこの現場でも「へっぇ~社会福祉士ですか」「だから何?」という程度でした。もちろん、さまざまな福祉関係機関の採用試験を受けましたが、ことごとく撃沈!
当時出産を控えていた妻と二人暮らしの私には、ゆっくりと就職活動をしている時間はなく、食肉解体業の仕事に就き、福祉業界への復帰を考えることになったのでした(畑違いのところからきた私を採用してくれ、すぐに社会保険もつけてくれた当時の会社には、本当に感謝です)。
そこに勤めて2年が過ぎた頃転機が訪れ、老人施設に併設する在宅介護支援センターに就職。間もなく始まる介護保険制度のもとで、老人福祉の仕組みが大きく変わろうとしている時でした。
これまでと違った動きが求められてきている現場で、どう動いたらよいのか教えてくれる人はいません。地域の中で支援センターはどのように機能していったらよいのか、自分はそこでどのような役割を担っていくことが必要なのか、常に考え、動きました。
「永島さんは妄想めいたことをよく話すね」と言われながら、今、目の前のことだけでなく、五年後、十年後、私たちの暮らす社会はどうなっているだろう。その社会で自分たちに求められる役割はどんなことだろう。そんなふうに未来に目を向け、現在(いま)の自分に必要な動きを考えるようになったのもこの頃でした。
私は現在「社会福祉士事務所」を開業し、地域で活動しています。資格ができて20年たっていますが、「社会福祉士」という資格は、今なお地域ではほとんど知られていません。
それでも開業して5年、未来に目を向け、現在(いま)の自分に必要な動きを考えながら、活動を続けてきました。そして、私は数年先、「社会福祉士」の活動する場はさらに広がっていくだろうと確信しています。そのためにも、自分たちに求められる役割は何なのか、何ができるのかを実践で示していかなければならないでしょう。
私のこれまでを振り返ってきて、話が長くなってしまいましたが、私が今回伝えたかったのは、合格率3割を切る「社会福祉士」という試験を受けられた皆さんに、まずは「お疲れさまでした」ということです。
「社会福祉士の資格をとって何のメリットがあるのですか?」と質問され、がっかりすることもありますが(10数年前の私自身も同じ気持ちでしたが…)、正直、取っただけでは大きくは何もかわらないと思います。資格を活かしていくのは皆さん自身です。今回の試験で資格を取得することができた方も、できなかった方も、これからさらに、新たな第一歩を踏み出していただけることを願っています。
できれば、新しいことにも前向きに挑戦し、五年先、十年先の自分たちの役割を熱く語り合える仲間が増えることを期待しています。
コメント
私も、「資格とって意味あるんすかね?」と職場の後輩にいわれました。
「何て人生に受身なんだろう」と思うのと同時に、社会福祉士としての私なりの意識をもって日々仕事をしているつもりだったのに、後輩に、伝わっていないことがとても残念でなりませんでした。
福祉施設などに勤務する有資格者は、おのずと福祉サラリーマンとして単に事業者に吸収されてしまうのではなく、専門職としての私と労働者としての私の使い分けと心構えをもたないと、「資格とっても意味がない。」と自らが嘆くことになるのだと思いました。
「社会福祉士の資格をとると、どんなチャンスがあるのですか?」と聞かれたいものです。
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