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永島徹の「風」の贈り物

新しい年は、互いに支え合う「介」の一年になるように。

 2007年の世相を漢字一つで表わす年末恒例の「今年の漢字」に「」が選ばれました。
 大手や老舗で相次いだ、食品をめぐる偽装。政治資金や年金記録不備の問題なども理由に挙げられ、寂しいことですが「なるほど!!」とうなずけてしまう一字です。

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 そして、残念ながら介護の業界でも、「偽」に値するようなことがいくつも明るみになった一年でした。「」と書いて「偽」という字になりますが、人の為(ため)にする行為の中に、大切なものが欠けてしまっていたのだと思います。それは、相手を思う気持ちです。自分の都合ばかりが優先され、相手のことを思いやり、考えられなくなってしまっている現実があります。
 介護の問題は、要介護高齢者やその家族にとっての問題だけではなく、私たちが暮らす社会全体の問題です。私は日頃認知症の方々や、その家族とかかわらせていただいていますが、認知症介護の根本にある問題も、互いに支え合っていくという関係性が希薄になってしまっている地域社会の現状にあると感じています。
 介護の「」という字は、人と人が支え合っている表形で、互いに助け合うという意味があります。介護というと、介護をする側からされる側への一方的な行為のように思われがちですが、介護は「支え合う人と人との関係性」そのものだと考えています。
 介護の問題を誰にも相談できないまま、一人思い悩んでいる方も少なくないでしょう。相手を思いやる余裕もないほどに、日々の介護に追われ、結果的に修復できないほどに互いの関係性が壊れてしまう現実もあります。だからこそ、介護は個人の問題ではなく、少しでも早く、社会全体で取り組んでいかなければならないことなのです。
 とても地道な活動ですが、これからも支え合う人と人との関係性に重点を置いて、地域を育む活動を続けていきたいと思います。もちろんそれは、みなさんと力を合わせ、支え合うことなしにはできないことです。これまでに出逢えて、すでにいろいろとお世話になっているみなさん、今後ともどうぞよろしくお願いします。そして、これからどんな方と出逢うことができるか、わくわくしています。これから出逢えるかもしれないみなさんも、どうぞよろしくお願いします。

 旧年中を振り返り、新しい年は、「偽」でなく、人と人が相手の思いを察しあいながら、互いに支え合える「介」の一年であってほしいと心から願いながら……。


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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