あたたかい手
私にとって生まれて初めての経験でした。なんと、ひょんなことからぎっくり腰をしてしまったのです。
きっと、介護や看護などを職業とする方は腰を痛めたことが、いや現在も痛めている方も多いと思います。そんなとき「自己管理がなっていないからだ」と言う方もいるかもしれませんが、誰も病気をしたくてなっている人はいないでしょう。私も、今回のぎっくり腰を経験してつくづくそう思いました。夜、床についても、寝返りに時間がかかり、起き上がるのにもひと苦労。そして、服を着替えるときもやっかいな状態。極めつけは、靴下でした。足に手が届かない。ふと、介護保険の認定調査項目を思い出してしまいました。いまの状態は、要介護2~3ではないかと。
そんな身体を抱えながら仕事をしていると、周りの方々の何気ない心配りがしみじみとありがたく感じます。そんな体験の一つとして、当集会所(地域密着型認知症デイ)に通い始めたばかりで、言葉での表現が難しくなっているある男性とのふれあいがありました。
私と一緒にいすに腰かけ、一緒に周りの様子をうかがったり、発語内容が不明瞭ですが、とりとめのない会話をいろいろとしていました。しかし私としては、非常に腰痛が激しく、顔がゆがんでしまう場面もありました。
「Fさん、私ね、腰が痛くて…… ぎっくり腰をしてしまって(激痛で顔が歪んでいます)。思うように動けなくて、みんなに迷惑をかけてすみません」
と、あまりにも腰痛が激しく、そんな話をしてしまいました。するとFさんは「そうね、○△※□だから、□○×△……でね」と、言語としては理解できないことを言いだし、静かに私の後ろに回り、腰と背中、肩をさすりだしたのです。
そのとき、そういえばFさんは以前、趣味でツボ押しの勉強をしていたことを思いだしまたした。「あ~っ、○△※□で、やっかいで□○×△……ね~っ」と、Fさんはこれまでにない優しい口調で話しながら、30分ほど私の腰の治療?をしてくれたのです。
実はとても気持ちよく、なんだか堅かった背中の筋肉も和らいだ感覚になりました。そのときの手のぬくもり…… 伝わってくるFさんの思いがありました。まさに「手あてをする」ということではないかと思いました。
「Fさん、本当にありがとう。だいぶ楽になりました。Fさんってすごく上手なんですね」
「いや~っそんなに、○△※□だから、□○×……」と、緊張の表情から笑顔がこぼれていました。
「お互いさま」ということを身にしみて感じた次第です。
コメント
お互いに支えあう「手あてのあたたかさ」と「*□○△で、○△※□だから、□○×……」の会話、永島さんらしくて、いいですねぇ。
わたしも13年来お付き合いしている、笑顔がすてきなアルツハイマーのGさんと、
「□○×……」 「あぁ~、□○×ですかぁ」??
笑顔がにっこり♥ 「Gさんの笑顔はすてきですねぇ」
「そう~、○△□で、**%#……」 なんて、
あきらめないでいつも何気なくおしゃべりしていると、時にその場にぴったりの言葉がポロッと出てきて、嬉しくなります。
彼の笑顔は、みんなの癒しになっています。
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