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永島徹の「風」の贈り物

「こども」力のすばらしさ

 今年もまた、小学4年生の総合学習の時期がやってきました。年に数回、総合学習の一環で、高齢者との交流から、受け継がれる生命(いのち)の大切さを学ぶことを目的としています。だからといって、「何かをしてあげる」という内容ではなく、子どもたちは「老い」ということについて、この授業体験を通してさまざまなことに気づいていきます。

年をとるってどんなこと
 子どもたちの気づきをサポートするために私は、オリエンテーションで次のような質問を順番にしていきます。まず、子供たちに「年をとるってどんなことだろう」と聞くと、「目が悪くなる。耳が遠くなる。足腰が弱くなる。ずく忘れる……」と、実に活発な意見が飛び出してきます。そこで、「『年をとる』って、どんな気持ちかな?」と問いかけると、「寂しくなる。悲しくなる」。私は「どうして?」と聞くと、「だって、思うように動けなくなるから……」と、ネガティブな答えが返ってきます。
 そこで、「みんなの知っているおじいさん、おばあさんの様子はどうかな?」と聞けば、しばらく考えてから、再び子どもたちの反応が返ってきます。
 「散歩のなんかを一緒にしているとき、とってもうれしそうな顔をしている」
 「サッカーでシュートできたことを教えると、『そいつぁ、偉かったな~ぁ』って喜んでくれる」
など、今度はポジティブな答えが返ってくるのです。
 ここで続けて、「それじゃあ、さっきみんなが言っていた『年をとること』の意見とずいぶん違うね」という具合で話をすすめます。すると、子どもたちの純真で見事な意見が出てきます。「そうだ、一緒に楽しくしているから、喜んでくれるんだよ」「やっぱり、一人でいると、寂しいもんね」。

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お年寄りまで変わらないこと
 教えごとではないこの気づきに、私たち大人は「ハッ」とさせられます。子どもたちはオリエンテーションの後、高齢者の集うデイサービスへ行き、自分たちでお年寄りと一緒にできることを考えて過ごします。そこでは、多くのことを子どもなりに感じます。
 この総合学習では、「生まれたときから、お年寄りまで変わらないことは何でしょう?」という課題も出していきます。授業が終盤を迎えると、子どもたちは次のような答えを導き出してきます。
「うれしいと思うこと」「悲しいと思うこと」「いのちです」
 なかには「私のいのちは、お父さん、お母さんから。そして、お父さんお母さんは、そのまたお父さん、お母さんからずっと受け継いでいる、『いのち』だと思います」という子どもも。ある少女は「だから私は、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、友達を大切にしていきたいと思いました」。
 「こども」力って本当にすばらしい。私たち大人が、子どもから気づかされ、教わることはたくさんあります。


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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