私たちの仕事の原点
Dさん(女性)は息子さんと二人暮らし。息子さんは日中仕事のため、どうしても昼間は一人で過ごさなくてはなりません。そんなDさん、一昨年から認知症状がみられ、これまでどおりの生活に調整が必要になってきました。
息子さんが考えた末、昨年秋より介護保険の在宅介護サービスを利用します。選ばれた担当ケアマネジャーは、Dさんや息子さんと話し合い、Dさんらしさを大切に考えながら、利用するサービスを提案していきました。
支え合い「安否確認」電話
「もう8時になるんだけど、まだ迎えにこないんけぇ~っ」と、やや不機嫌そうなCさんからの電話が午後8時に入ってきます。
私は社会福祉士事務所を開業し、地域密着型認知症デイービスも開業しています。しかもこの事務所は、私たち家族の住まいにもなっているのです。まさに「地域密着すぎ!?デイサービス」。そのため、ひとり暮らしのCさんが、ある理由により見当識障害が出現したとき、その不安に苛まれ、デイサービス利用の迎えコールの電話確認をしてきますが、この電話によるつながりは、Cさんと私たち家族の安否確認電話になっていると、勝手に感謝しています。そこで、その感謝の気持ちを込めながら、私自身がうっかりした雰囲気を醸し出し、会話をすすめていきます。
何気ない支え合いから育まれる、地域「ふくし」※
ある日、一人暮らしのBさん宅を訪問する際、事前の電話での会話です。
――もしもし、「風の詩」の永島ですが……
Bさん「はぁどなたですか? 申し訳ないですけれど、あのぉ~私もこの歳なので分かりませんの……それじゃごめんくださいね。ブツ。ツーッツーッ」
と電話が切られます。いつものことですが、電話をかける前に、話す内容の準備をきっちりしていないと、タイミングを外されてしまいます。「今日もさすがだ!」と感心してしまう反面、ひとり受話器を持っている私……
ひとりの「思い」から広がる力(エネルギー)
活き活きと咲く草花の光景を目にすることができる、とても気持ちのよい季節になりました。先日、訪問先の庭先に『マーガレット』が一面咲いている光景を目にしました。
ふと、一人暮らしをされていたAさん(女性)の言葉を思い出しました。
「私ね、朝目覚めると、『今日も生きていたなぁ。それじゃ、今日は何をしていこうか』と毎朝考えて生活しているの。自然の中で生かされていることに感謝して、『誠実』にその1日を生きるようにしているのよ。大変なときもあるけどさ、笑っているほうがいいじゃない(笑)」
Aさんは長い間、後縦靭帯骨化症を患い、時には身の置き場がないくらい、つらい痛みやしびれを伴う生活をされていました。その思いを、仏壇のお位牌の後ろに貼り付けてある紙に「どうか、このつらさを和らげてください」と辿々しい文字で書き、願っていました。