開拓の地の福祉
札幌あゆみの園で虐待防止研修を務めた後、道内二つの社会福祉法人が運営する多様な事業所の実情視察に赴きました。
北海道は開拓の地です。本州から訪れた私には、北海道の福祉の取り組みにも開拓の文化・気風があると感じられました。この視察は、何回かに分けて報告します。
静内の「オープンコミュニティみんくる」
北海道の特徴は、何よりも広いことにあると言っていいでしょう。牧場や畑の一区画当たりの広さは本州よりも格段に広いのと同じように、施設や事業所の敷地面積も北海道では圧倒的な広さを確認できます。建物も平屋が多いため、モビリティとバリアフリーを担保するには明らかなアドバンテージがあります。
冒頭の画像は、社会福祉法人静内ペテカリの運営する「オープンコミュニティみんくる」という事業所群です。全体は画像よりも広いのですが、手持ちのレンズで収めることのできる画角がこれで目一杯なため、広さを実感していただけないかもしれません。
ここに事業所を集めることによって、多機能共生型の地域生活支援機能を確保するのです。具体的には、就労継続支援Bの「カフェサロンぱれっと」、生活介護のデイセンター「虹」、児童デイサービス・日中一時支援の「ほっぷくらぶ」、ショートステイホーム「わくわく」、9カ所のグループホーム支援を展開する居宅介護・移動支援・生活支援センター「ガーデン」、新ひだか児童養育相談センターの6つの事業所です。
ぱれっとの駄菓子コーナー
この内、「カフェサロンぱれっと」は就労継続支援B型事業所として障害のある人の就労の場であると同時に、障害のあるなしにかかわらず喫茶・軽食を楽しみながら、老若男女が集うことのできるコミュニティセンターのような役割を担っているのです。赤ちゃんの授乳室や乳幼児が安心して遊べるスペースも確保され、駄菓子コーナーも設置されていました。
これらの事業所が集積されている敷地と建物は、実は、建設の頓挫した日高横断道路の現場事務所・宿泊所の跡地利用です。日高横断道路はわが国の悪しき公共事業と自然破壊の典型例のようなもので、結局、未完成のまま頓挫することになりました。この現場事務所を町と福祉関係者が、「多機能共生型」の社会資源に丸ごと変えていく取り組みは、他の地域ではなかなかみられないダイナミズムを感じます。
競走馬の牧場
静内ペテカリの就労継続支援B型事業所である「Zono」は、清掃・草刈などの環境整備に加え、馬服や布団等のクリーニングの仕事に取り組んでいます。この地域は、競走馬を育成する牧場が多く、馬たちが冬に着る実に大きな馬服のクリーニング需要に応える就労の取り組みというのも、この地ならではのものでしょう。
馬服のクリーニング
敷地の広さは、関係者の暮らし方にも北海道ならではの大らかさを生み出しています。新得町の社会福祉法人厚生協会のわかふじ寮の敷地には、広大な畑があって、施設利用者がさまざまな作物を栽培しています。画像は広大な畑の一部に過ぎず、キャベツとカボチャがたくさん生っていました。あまりにもたくさん生っているので、これだけの数のキャベツとカボチャを誰が食べるのだろうとの疑問が湧くくらいです。
わかふじ寮敷地の畑
わかふじ寮の取り組みの詳細は次回に譲りますが、ここで木工作業に従事して畑作にも汗を流している利用者にお話を伺いました。わかふじ寮で働くことに誇りを持っておられることを実感できます。そして、その仕事を終えた後や休日に畑作にも汗を流すことによって、リフレッシュと充実を満喫していることは間違いないものと感じました。
木工作業をしながら畑作をするAさん
狭い島国の日本とはいえ、地域ごとの生活文化・気候・風土は実に多様です。地域生活と支援のあり方はこのような多様性を反映していますし、地域の特質を活かすことを意識的に追求した度合いに応じて、すべての地域住民に根ざした取り組みとなっていくでしょう。(次回に続く)
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