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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

障害のある人の参政権

 公職選挙法の改正により、昨日の参議院選挙から成年被後見人も選挙権を行使できるようになりました。長年にわたる当事者・関係者の願いと政治的権利の実現は、障害者の権利条約の批准に向けた意味を含めて、大きな前進だと考えます。

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 ただし、障害のある人の支援にかかわる取り組みは、「成年被後見人と選挙権」という狭い枠組のものではなく、障害のある人たちの参政権保障の課題にあると言うべきでしょう。
 例えば、知的障害のある人の参政権保障の取り組みの実際について『医療福祉相談ガイド』(中央法規出版)の知的障害のところで具体的に提示したものもありますから、ぜひお読みいただきたいと思います。

 公職選挙法の改正に関わる課題は、選挙権だけでなく、被選挙権の保障についても含まれており、これらのすべてに意思決定支援のあり方が鋭く問われざるを得ません。被選挙権の行使については、障害のある人の議員ネットなどがこれまでの活動と取り組みから、改善課題の提案を広く社会に明らかにしていくことにも期待が高まります。

 数多くの政党が、多様な領域の政策課題についての、さまざまな主張を展開しています。これらの主張を批判的に理解し、自分の支持する政治家と政党を明確にしていく作業は、障害のあるなしにかかわらず、大変な作業でしょう。このような障害のある人自身の考察と選択に資する情報保障と意思決定支援のあり方には、未だに試行錯誤の域を出ていない多くの検討課題があるのは間違いありません。

 今回の参議院選挙だけでなく、衆議院の総選挙、都道府県の知事・議員の選挙、市町村の首長・議員の選挙など、それぞれの選挙の特質や政策範囲の異同について、選挙公報のあり方の改善を含めて、拡張・代替コミュニケーションの活用を含む意思決定支援の取り組みが支援の権利擁護の課題としてますます重要性を持ちます。

 今回の公職選挙法の改正では、代理投票における補助者の見直しや、指定病院等の不在者投票における外部立会人の規定が盛り込まれることになりました。しかし、選挙権の行使に係る意思決定支援のあり方が曖昧なままでは、投票行動の誘導を回避することは困難です。

 今回の参議院選挙のさまざまなフィールドの取り組みを支援者・事業者・団体等の枠を超えて明らかにし、意思決定支援の質的向上に向けた教訓と課題をすべての支援者とフィールドが共有しながら、改善を積み重ねていくことが何よりも大切です。

 公職選挙法の範囲で見た参政権についてだけでも、相当な検討課題があります。これをさらに、障害のある人の政治的参画の権利と受けとめて取り組みの課題を考慮すると、学校、地域、諸施設の取り組みのすべてに、公職選挙法の改正を画期とする新しい工夫が求められます。

 政治的参画の権利保障には、民主的討議と参画と人権擁護のあり方、参画による学校・地域・諸施設の取り組みやシステムの改善が、すべての人たちに分かりやすく提示されて、実体験に基づく権利行使と学習が必要です。

 具体的には、学校の生徒会活動、地域における子ども会活動、諸施設における利用者の会活動において、障害のある人たちの人権擁護に資する民主的討議と参画が最大限に追求されていなければなりません。障害領域における自治体施策や国策に係る参画保障の実質化に必要な工夫もさらに深化させなければならないでしょう。表面的で形式的な「参画」をもって施策形成のための行政的なアリバイとする傾向は、未だに払拭されてはいないでしょう。

 このように、今回の参院選を画期に、障害のある人の暮らしの諸側面にかかわる、さまざまなレべルの政治的権利行使のための取り組みを、拡張・代替コミュニケーションの活用を含む意思決定支援を土台に進めることが、支援者に求められるようになったと言えるでしょう。


コメント


はじめに、まず成年被後見人の方々が今まで、参政権を持っていなかったことを知りませんでした。これは恥ずかしいことです。

そもそも、国や県、その他機関の代表を決める選挙は国民全体に影響を与えるものです。その国民全体に成年被後見人の方々は入ってるはずで
す。でなければ、議員は国の代表とは言えないでしょう。
そして今回、成年被後見人の方々が参政権を得られ、選挙が納得のいく形式になったと思います。

五月に法が改正されましたが、驚いたことに、裁判において(成年被後見人の方が参政権を求めて国に訴えて、法が違憲と判断された裁判)、国が控訴しました。その理由が、自分の行為の結果を認識できない成年被後見人の選挙権を剥奪するのは合憲だ、です。これは基本的人権の侵害です。
和解という形でこの件は落ち着きましたが、国にはより人権を大切に扱って欲しいと思いました。

参考
2013/07/18/14:10
神奈川新聞 社説


投稿者: やまもと | 2013年07月22日 16:39

選挙法の改正は大きな前進だと思います。しかし法を改正するのみでは、実体は伴わないのではないかとも思います。
法が悪用され、例えば知的障害を持つ人々に支持政党への投票を促す人間がいないとも限りません。障害の有無に関わらず、情報に流されやすい世の中です。
この法改正が真に力を発揮するには人々の理解が不可欠でしょう。鶏と卵の様な話ですが、この改正が人々の理解を深め、自身の助けとなることを祈っています。


投稿者: ろすさん | 2013年07月22日 22:55

障害がある人の参政権にまつわる話を初めて聞いた。というより、今まで気付かなかったと言うのが正しいかもしれない。思い返してみれば、選挙だけにかかわらず、障害がある人のことを考慮していない場面が多々存在する。日本人はそんなに薄情なのか。いや、そうではないと思う。この問題の原因は障害がある人に深くかかわらない方がよいという風潮だ。言い方はよろしくないが、かわいそうなことは触れないでそっとしておくということだ。これでは、いくらバリアフリーの設備が整っても、対人のコミュニケーションのバリアはいつまで経ってもなくならない。障害がある人についての正しい知識と認識を学校教育でしっかりと教えるべきだと思う。


投稿者: k.w | 2013年07月23日 10:04

障害のある人の参政権ということですが、わたしは障害のある人に参政権が今まで認められていなかったことを今まで知りませんでした。参政権は、国民主権を主張する民主主義国家の日本の国民には欠かせない権利と言えます。この権利が障害のある人に認められていないという事実を知らなかったのは、当然私の知識不足ではありますが、参政権が認められないということはあり得ないと暗に思い込んでいたためです。障害があるからと言ってこの権利が認められないのはおかしな話だと思います。今回の選挙から選挙権を行使できるようになったことをきっかけとして、障害のある人の様々な権利について、社会全体で見直し、向上することができていけたらよいと思いました。


投稿者: さっこたしゅ | 2013年07月23日 21:29

今回の選挙は、成年後見制度を利用する人たちの選挙権が回復して初の国政選挙だということを、ニュースを見て初めて知りました。わたしは無知で、成年後見制度というものも知らなかったので、今回の選挙で障害を持った人たちの投票のやりかたを知りました。しかし、普通の人でも政治やその政策については難しく理解しづらい部分もあるのに、知的障害などを持った人たちは自分の意思で候補者を選ぶことができるのかと疑問に思いました。


投稿者: 耳たぶ | 2013年07月24日 11:12

私はまだ選挙権を行使することができませんが、選挙の報道は興味を持って見るようにしています。
私なりに情報を取捨選択して自分がもしも選挙権を持っていたらどこへ投票するのだろうということは考えるようにしています。
障害を持った方が情報を得て、自分の選挙権を行使することは私たち以上に大変なことであると思われます。

障害のある方たちの意思や意見がしっかり反映された社会を作っていくためにはまだまだ改善点が多いのだとこのブログを見て改めて感じるとともに、障害のある方たちの民意が政治に反映されるようになるためには、私たちの働きかけや支援が大事なのではないかと強く感じた。

ねじれ国会ではなくなった今、障害のある方たちの生活しやすい社会を作るための法案が可決されていくことを願いたいです。


投稿者: 山羊 | 2013年07月24日 11:15

公職選挙法の改正によって、参議院選挙から、成年被後見人も選挙権を行使できることを初めて知りました。このことは、障害のある方にとって大きな前進でありますが、自分でも選挙の情報を得て、その政策を理解し、投票することは、難しいと思う部分があるのに対して、果たして障害のある方がきちんと情報を理解し、投票することができるのだろうかという疑問がが残りますが、この法の改正は障害のある方の意見が反映される社会づくりにとって欠かせないことであるので課題を見直して、もっと向上されることを願います。


投稿者: りんご | 2013年07月25日 01:55

私が今バイトで関わっている団体は地域で生きる障がい者の自立支援をしていて、成人の知的障害者の方も多く所属しています。そこでのみなさんの会話を聞いていると政治の話はあたり前のように上がってきます。特に先日の参院選の際は皆でパソコンやテレビの前に集まり開票の時間を今か今かと待っていました。
本当に必要なのは表面的な政策ではなくこのように知的障害を持っていても対等に政治の話をすることができる周りの環境なのではないかと思います。恥ずかしい話ですが、むしろ彼らの話に私がついていけませんでした。
障害があるという表面的な事実だけにとらわれることなく、その人の本質をみようとする人が増えれば良いと思います。


投稿者: すーぱーうーまん | 2013年07月25日 12:49

障がい者に参政権が認められてこなかったのは、「正確な判断ができない」、「自分の意思が他人によって左右されやすい」などが挙げられるのでしょうか。だとしたらそれは、参政権を認めない理由になるでしょうか。
近年の投票率の低下は若者の政治への関心のなさが主な原因ですが、そんな若者たちと障がい者たちは何が違うのでしょうか。最近の若者よりも政治に関心を持っている障がい者だってたくさんいるでしょう。
近年の若者は、言ってしまえば、参政権に関して「障がい」を持っていると思います。だとすれば彼らの間に差異はないと考えられるのではないでしょうか。
障がい者の方々の政治参加が進み、世間からの理解も深まっていくことは、同時に、今の若い世代にも少なからず良い影響をもたらすのではないかと感じました。


投稿者: たらお | 2013年07月26日 01:45

障害を持つ人の参政権がどうなっているのかなどということは、これまで一切考えたことがありませんでした。障害のある人は国家や地方自治体による大規模なバックアップを必要とするので、積極的に選挙に関わることができるように制度を整えていく必要があると感じました。また、投票所として利用される公民館や小学校などのバリアフリー化も今後取り組むべき課題として挙げられると思います。


投稿者: だおだい | 2013年07月26日 12:14

私は知識不足で、障害のある方に選挙権がなかったことはおろか、成年後見制度という言葉の意味すら知りませんでした。参政権は日本国憲法で20歳以上のすべての男女に与えられると規定されているのだから、障害のある方に参政権がないなどと考えたことがなかったのです。少し考えてみれば、健常者であっても、各政党の政策を理解したり、あふれかえる情報を取捨選択するのは困難であるにも関わらず、障害のある方が本当に自分の意志で投票ができるのか疑問に思われます。しかし今回の法改正は、障害の有無に関わらず国民が参政権を持つことに対して市民全体が考える機会を与えられたと思います。


投稿者: くずきり | 2013年07月26日 16:07

この記事を読んで、今回の参議院選挙の背景に障害を抱えた人たちに深い関係があることを知ることができました。アベノミクスやTPPや原発問題などにばかり目が行ってしまって、そんな意味が込められていたなんて気づきもしませんでした。政治にはどのような形であれ、やはり障害を持った人たちとは向き合わなくてはならないという責任が伴っていることを再認識することができました。早く、少しでも現在の日本の現状をよくするために、我々有権者はよりこのことについて理解を深めるべきですね。


投稿者: たなか | 2013年07月26日 16:11

今回の選挙から成年被後見人も選挙権を行使できるようになったということは、テレビのニュースを見て初めて知りました。
今回の改正によってより多くの方が選挙に参加できるようになったことは大変素晴らしいことだと思います。しかし先生もおっしゃる通り複数の候補の中からそれぞれの政策を理解し、投票する人を選ぶのは本当に難しいことであり、それを障害のある方も行わなければならないということになります。
これからの選挙は、そのような方々もいるということに考慮して政策をより分かりやすくするなどの様々な配慮が必要不可欠になってくると思います。


投稿者: K.H | 2013年07月26日 17:04

この記事を読むまで、自分はしょうがい者の方々が参政権をもっていなかったことを知りませんでした。しかしよくよく考えると「しょうがい者の人たちはどのように投票しているのか」と疑問をもてばすぐに気になるはずの内容であることは確かです。そこに気がつかなかったことは、自分が日頃そういう境遇の人々ならどうするのかという意識や疑問を何も抱かなかったからではないかと思い、恥ずかしいです。基本的人権の尊重に基づいて考えるならば、この政策の決定は確かに正しいことなのでしょう。しかし月並みな意見になってしまいますが、やはり自分の意思でしっかりと選挙に参加できるのか分からない人にまで権利を与えるのは果たして本当に正しいのでしょうか。誰もが思いつきますがやはり彼らの投票権を悪用しようとする団体は必ずどこかで出てくるでしょうし、結局投票を代理で行う人が現れる場合、時によっては有権者となった方の意思が必ず反映されるとも限りません。しかしやはり自分は不安を感じつつもこの決定に賛成します。しょうがい者の方々に一般人と平等の権利を与えることは、こうした一つの意思決定の場だけでなく社会的に彼らが他の人々と対等の権利をもっているというステータスの発生につながります。また、代表者を立てる場合も投票先が彼らの生活を改善してくれる党などを絞る際に、利害が一致していると言う点で悪用のされない組織票が出来上がる事が期待されます。しっかりとしたサポートが必要でしょうが、やはりこうした形でのしょうがい者の方々の権利の獲得は重要な意味合いを持っていくはずです


投稿者: 97 | 2013年12月18日 02:36

私はこのニュースを知るまで「成年後見人」という制度をよく知りませんでした。参政権はすべての国民に与えらえれるはずであるはずなのに障害をもった人が「本当の本人の意思を尊重できない」などの理由で参政権を剥奪されてきたということは事実として重く受け止めるべきだと思いました。しかし、今回参政権が認められたことでも大きな進歩だと思いますが、まだまだどのように本人の意思を尊重するかや障害を持つ方たちにもよくわかりやすい選挙活動を行っていかなければならないなどたくさんの課題を克服していかなければならないと思いました。


投稿者: ちゃん | 2014年01月23日 09:58

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

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