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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

小倉の熱い夏

 北九州市小倉で開催された全通研学校(全国手話通訳者問題研究会の学習会)に講師として参加してきました。折しも小倉は、小倉祇園太鼓の真最中。街にお祭りの太鼓が響き渡る中で、全通研学校も熱い学習と交流会が開催されました。

写真1
小倉祇園太鼓

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 さいたま市の条例づくりのときも、ご協力を戴いた手話通訳者のみなさんは、手話通訳論、コミュニケーション論、そして社会福祉論をとても深く学んでおられることを実感させられました。聴覚障害者とともに手話通訳者の社会的地位の向上に資する取り組みを進めてきた団体が全通研です。そして、全通研学校は、手話通訳者と聴覚障害者がともに歩むための学習と研鑽の場であると同時に、聴覚障害をめぐる支援者の文化運動としての性格をもつ取り組みとして特筆すべきものがあると考えてきました。

写真2
全通研学校の会場で

 私の講演の主旨は、社会福祉法の下での地域福祉をめぐり、「新しい公共」論における公的サービスと住民相互の支え合いの位置づけ方の問題点を指摘した上で、今後の地域住民の自主的・自発的な活動の可能性を深めようとするものです。

 現代の地域福祉の取り組みは、とても一筋縄で前進できるものではありません。事態はまことに複雑なために、私がフィールドワークをしてきたさいたま市の事例を柱にしつつも、国際的な社会経済情勢、国家と自治体の役割・関係の変化、地域社会からの足場(橋頭保)づくりの課題など論点は多岐にわたります。
 それでも、参加された手話通訳者の方々は、私の講演の2時間余りの間、最後まで集中力を切らさずに学習されていました。

写真3

災害時のバンダナ

 会場では、諫早手話サークル福祉部作成の防災グッズも販売されていました。緊急災害時、目で見て分かりにくい聴覚障害者の方が、「私はここにいますよ!」とアピールできるバンダナであり、反転で使用すると「手話でお手伝いできます!」と手話ボランティア用のバンダナに変身します。いいアイデアですね。

 交流会の宴となり、九州各地の手話通訳者と楽しく輪を囲みました。話を伺ってみると、みなさんが自分自身の日常的なコミュニケーションのあり方に高い課題意識を持っておられることに気づかされます。たとえば、「私の話の運びには、どうも情念に流されてしまう傾きがあって、理に適うコミュニケーションがうまくいっていない」とし、「理に適う話の運びにしようと努めると、今度は流暢さに欠けて訥々とした話しぶりになってしまうのよ」とお話になるのです。

 この辺りはさすがに手話通訳者です。福祉の仕事をコミュニケーション労働と規定する論者もいますから、福祉領域のすべての支援者にこの課題は共通するところでしょう。でも、率直に言って、通常の支援者よりも課題意識と悩みの質は、手話通訳者がずばぬけて高いと感じます。それはおそらく、手話通訳の営みは、あらゆる生活場面のコミュニケーション・情報保障にかかわるものであるためにマニュアルや仕事術に収まるものでないことに加え、手話通訳者は力の優位性をもたないことにも起因するものと思います。

 また、少年院の法務教官の仕事をしながら、手話通訳者をされている方にも出会いました。学生時代から手話通訳サークルに入って活動されてきた20歳代後半の男性で、自分の中で少年院という閉ざされた空間の仕事とのバランスをとるためにも、手話通訳の仕事は実にやりがいがあるとおっしゃっていました。いや~、実に頼もしい!

写真4
ゴボ天うどんで腹ごしらえ‐蒲鉾には屋号が

 九州は庶民の食文化が実にゆたかな地域です。全通研学校に入る前にまずは腹ごしらえ。ご当地で人気の高い「資(すけ)さんうどん」の月見ゴボ天うどんとかしわ飯のおにぎりセット。「ゴボ天」とは牛蒡の天ぷらを、「かしわ」とは鶏肉をそれぞれ指します。本日の大満足のはじまりです。

 そして、全通研学校で汗をかきかき話をして、皆さんと交流できて、二つ目の大満足。

写真5
小倉A級グルメ「丸和前」

 そして、熱い小倉の締めくくりの大満足は、小倉屋台のA級グルメ「丸和前」。この屋号は、丸和というスーパーマーケットの前に夜の屋台を構えることから命名されたとか。おでんは種の豊富さにだし汁の味付けが絶品です。大根や丸揚げの定番はむろんのこと、とくに生麩のおでんはもちっとした食感と味の滲み具合がもうたまらない。

写真6.jpg
この屋台のおでんにはそそられます

 もちろん、最後は丸和前のラーメンです。ここの豚骨スープは、一口すすると実にあっさりしているのですが、しばらくすると豚骨の濃厚な味わいが口中に広がります。このラーメンを食べてしまうと、首都圏にありがちな「偽りの九州豚骨ラーメン」は食べられなくなりますね。あ~美味しかった!

写真7.jpg
絶品のラーメン‐これはおすすめ!!


コメント


「九州は庶民の食文化が実にゆたかな地域です.」と先生がおっしゃる理由が3枚の写真を見て非常によくわかりました.特に小倉屋台のA級グルメ「丸和前」は,これは絶対においしい!!というのを写真を一目見た瞬間に思いました.おでんの種類の多さとだしがよくしみこんでいておいしそうに見えて,とても食欲がそそられました.おでんや資さんうどんや九州豚骨ラーメンなどのおいしい食べ物を食べに行くだけでも非常に価値のあるものだと思うので,九州に行った際にはぜひ食べてみたいと思いました.


投稿者: デルピエロ | 2012年07月23日 14:13

私は正直「新しい公共」論について、詳しく話すことはできませんが、記事の中にあるようなバンダナのアイデアはとても素晴らしいと思います。
普段の生活ではあまり見えてこない福祉関連の様々な対策が、震災時などには一番力を発揮すると思うので、このようなグッズなどの情報はもっと世間に広まるべきだと私は考えます。
私は九州には行ったことがないのですが、機会があれば私もぜひ丸和前で本場の九州豚骨ラーメン
を食べてみたいです。


投稿者: Anonymous | 2012年07月24日 14:03

私は正直「新しい公共」論について、詳しく話すことはできませんが、記事の中にあるようなバンダナのアイデアはとても素晴らしいと思います。
普段の生活ではあまり見えてこない福祉関連の様々な対策が、震災時などには一番力を発揮すると思うので、このようなグッズなどの情報はもっと世間に広まるべきだと私は考えます。
私は九州には行ったことがないのですが、機会があれば私もぜひ丸和前で本場の九州豚骨ラーメン
を食べてみたいです。


投稿者: TDN | 2012年07月24日 15:24

実は、私は一度も九州を訪れたことがありません。ですが、美味しい食べ物や素晴らしい伝統文化が沢山あることは、旅雑誌などから情報を得るので知っています。私たちは毎日こうした日本の文化に少なからず携わっていますが、それは決して当たり前のことではなく、奇跡に近いことだと感じることが多くなりました。例えば、ラーメンはもともと中国の食べ物です。もし、中国との交流がなければ、ラーメンは食べられなかったわけですから、今こうして日本全国にラーメン店が存在することも奇跡に近いことだと思います。是非、学生のうちに一度九州を旅行したいです。特に、長崎や福岡に行けたらよいと考えています。


投稿者: みやこ | 2012年07月24日 15:27

僕も九州に行ったことはあるのですがご当地グルメは食べられずに帰ってしまいました。九州料理はおいしいと聞いているのでこの3枚の写真を見てとても食べたいなと思いました。特に僕は九州のとんこつラーメンが大好きで暇な時間とお金があれば首都圏にある九州とんこつラーメン屋を友達とめぐっています。しかし、今回教授の丸和前のラーメンを食べると首都圏にありがちな「偽りの九州豚骨ラーメン」は食べられなくなるというレポを見てより一層本場の味というものを味わいたいなと思いました。


投稿者: ガチかぁ | 2012年07月24日 16:34

手話通訳者の問題はたくさんあり、この問題解決に向けて少しでも何か出来ないかと講演会などに参加する手話通訳者の方々がこんなにもいるのかと写真を見て驚きました。また、手話通訳者の方々が社会全体の福祉の問題に目を向けながらも、自分自身の手話通訳者としての問題を抱えていることに気がつきました。
コミュニケーションを取るツールの一つと考えていた手話ですが、ツールとしてだけではなく生きた言葉(流暢な会話?)を目指し、高い志をもっている手話通訳者の方々に関心したと同時に、私ももっとコミュニケーションに敏感に生きていかなければいけないと感じました。
屋台のおでん本っ当においしそうです!!ビールに合いそうですね。


投稿者: umakuikne | 2012年07月24日 22:59

先生が講義をされている写真を見るに手話通訳者の方の年齢は比較的高齢の方が多いように見受けられました。ほかの福祉関連の職業や活動などもそうですが若者がそういった福祉関係の活動から離れてしまったら福祉の行き届かない世の中になってしまい、福祉を必要とする人が生きずらくなってしまうので是正しなくてはならないと思いました。是正するためには、若者により多くの福祉に触れる機会が必要であると考えます。故に学校などはそういう活動をもっと増やすべきであると思います。
また、後半の記事のゴボ天うどんやおでんや豚骨ラーメンはとてもおいしそうです。今度九州に行く機会があったらぜひ食べいてみたいです。


投稿者: 月に叢雲 | 2012年07月25日 10:43

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
タイトル:『障害者虐待 その理解と防止のために』
編著者:宗澤忠雄
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発行:中央法規
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