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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

いよいよ金環日食!!(1)楽しんで観測するために

 5月21日(月)の金環日食がいよいよ近づいてきました。日常生活圏で日食を観望できるのは、一生に一度あるかどうかの幸運です。金の指輪のように輝く太陽を、みんなでぜひとも眺めましょう!

太陽-黒いシミは太陽黒点 2012/04/24 11:40撮影
太陽-黒いシミは太陽黒点 2012/04/24 11:40撮影

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楽しみは安全第一で
 日食を観るためには何よりもまず、安全第一に注意しなければなりません。学校には理科や養護教諭の先生が必ずいますから、安全面への配慮も徹底されやすい条件がありますが、社会福祉施設関係では注意の行き届かない恐れが多分にあるのではないでしょうか。
 子どもたちの眼の健康を損なわないための留意点や、学校の登校時間と重なることの注意喚起など、日食観望に必要な注意事項と準備の一切については、日本天文協議会・日本眼科学会・日本眼科医会の共同で公開されているサイトがありますので、不案内な向きにはぜひともご活用ください(http://www.nichigan.or.jp/sun/sun_attention.pdf)。

さまざまに市販される日食グラス
さまざまに市販される日食グラス

 もっとも心配されるのは、「日食網膜症」です。このような疾患単位があるというのも、昔から日食の度に世界各地で大勢の人たちがこの病にかかってきたからです。今回の金環日食でも、数千人の患者が発生するのではないかと懸念されています。
 とりわけ、今回の金環日食は、食の最大時(金の指輪状になった時)でも、皆既日食と比べて数千倍の明るさを保っていますから、裸眼で直接金環日食を観ることはむろんのこと、ろうそくのススをつけた板ガラス、黒い下敷き、写真撮影用の一般的なNDフィルター(減光フィルター)などを通して太陽を眺めることは、絶対にやめてください。安心して日食を観望できるのは、専用の日食グラスをつけた場合だけです。今では、さまざまな雑誌の付録についていますし、近所のスーパーでもレジそばのコーナーに数百円の値札でぶら下がっていますから、すぐに入手することが可能です。

太陽光の熱エネルギーは絶大
太陽光の熱エネルギーは絶大
太陽光の熱エネルギーは絶大

 小さな虫メガネの焦点に太陽を集光してみると、1秒ほどで紙は燃えて穴が開きます。このような簡単な実験でも太陽の光のものすごさは分かるでしょう。しかし、「日食網膜症」というのは「熱で網膜が焼けてしまう」のではありません。眼に有害な波長成分を含む太陽光が網膜にあたり続けると、最終的に網膜が不可逆的な変化を起こしてしまう危険があるのです。専用の日食グラスは太陽光を減光するだけでなく、有害な波長成分を除去するフィルターの役割も果たす機能を持っています。
 そこで、ススをつけた板ガラスや黒い下敷きには減光する効果はあるとしても、眼に有害な波長成分を取り除く機能はありませんから、減光に安心して太陽を見続けてしまうと日食網膜症になる危険が大きいのです。

 カメラで撮影されたい方は、日食専用のフィルターを必ず装着して下さい。一眼レフ用のレンズには、1/10000に減光できる日食撮影用のフィルターが販売されていますし、双眼鏡や天体望遠鏡のための太陽観測用の減光フィルターは光学用品店(天体望遠鏡やフィールドスコープを取扱う専門店)などで扱っています。カメラ、双眼鏡・天体望遠鏡に共通して、日食観測用のフィルターは対物レンズの前(つまり太陽光の入り口)にとりつける形になります(下の画像参照)。

私の観望機器にはすべて日食専用フィルターが
私の観望機器にはすべて日食専用フィルターが

 したがって、このようなフィルターを取り付けることのできないコンパクトデジカメや携帯電話の写メでの撮影はおやめになって下さい。ミラーレス一眼レフにコンパクトデジカメや携帯電話では、これらの撮像素子が虫メガネで紙を燃やすように焼けて壊れること請け合いです(この修理代はかなりの金額になるはずです)。カメラレンズの前に日食グラスをかざして撮影するのも、無理とリスクは大きいでしょう。
 冒頭の太陽の画像は、レフレックスNikkor500mmF8に2倍のテレコンバーターをつけて焦点距離1000mmF16とした超望遠レンズの状態に、天体望遠鏡用の日食専用フィルターを対物レンズ側に装着して撮影したものです。野鳥の撮影に最適な望遠レンズの300mmや400mmのF2.8(通称サンニッパ、ヨンニッパ)は、レンズの明るさが仇となって、1/10000の減光フィルターをつけない限り、太陽の撮影には不向きです。
 ほとんどのコンパクトデジカメは、ズームレンズの望遠側でせいぜい300~400mm(35mm換算の数値)程度ですから、フィルターをつけない状態で熱を避けることを慎重に考慮しながら瞬間的に太陽にレンズを向けてシャッターを切ったとしても、像は小さく、金環状の太陽の姿を撮影できることはまずありません。金環日食の明るさに、小さな像の暗部がつぶされるからです。

さあ、みんなで金環日食を観よう!!
 以上のことにくれぐれも注意して、金環日食を多くの方に満喫していただきたいと思います。5月21日が快晴になることを祈りながら。


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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

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