さいたま市条例全面施行を目前にして
さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例は、この4月に全面施行され、差別・虐待事案への対応がはじまることとなります。そこで、この3月21日にはさいたま市条例実務者研修が開催され、条例と虐待対応に関する研修を実施しました。
研修会場には100名を超える参加者が
虐待対応に関する実務については、この一年間、さいたま市地域自立支援協議会が検討を重ねてきました。さいたま市では、条例にもとづく『さいたま市障害者相談支援指針』を相談支援の実務マニュアルとしており、新年度版の『指針』の虐待対応部分は、これまでの暫定版を一新したマニュアルとなります。
自立支援協議会は市町村の必置義務となりましたが、設置のあり方は市町村によって実に多様です。さいたま市の場合、障害者自立支援法だけでなく条例にもとづく協議会であり、自治体の附属機関としての位置づけをもって、行政区支援課、障害者生活支援センター、障害者支援事業所、保健所、こころの健康センター(精神保健福祉センター)、障害福祉課の各職員と当事者で構成し、私が会長をしています。
差別・虐待事案への対応は、ときとして私権領域への介入的アプローチを必要とするため、行政機関の職員を含めた対応実務の検討が必要不可欠となります。この点で、さいたま市の自立支援協議会のあり方は、実務のあり方を実効的に検討する上できわめて有意義なものだと考えています。
この『指針』に新しく盛り込まれる虐待対応部分の検討は、事例検討を議論の出発点に置いてきました。そこで、地域自立支援協議会虐待部会が、この指針づくりに費やした時間は膨大なものです。養護者による虐待事例、使用者による虐待事例、施設従事者等による虐待事例をそれぞれ検討した上で、サインリスト、リスクアセスメント・チェックシート、支援者・支援事業者自己点検リスト等のチェックリスト類を作成し、虐待対応における留意事項、立ち入り調査の手順と準備用品等々を含め、虐待対応部分だけで120頁にも及ぶ実務指針を作成してきたのです。
この作業プロセスは、地域自立支援協議会に参加する各機関職員による虐待実務の共有化でもありました。そこで、次の課題として浮上するのは、このようにして作成された実務マニュアルをもとに、全市的な支援職員の実務を平準化していくことです。通常の相談支援は受容的アプローチが基本であるのに対し、虐待対応における相談支援の多くはアウトリーチ型の介入的アプローチが求められるため、迅速で的確な事実確認・対応方針の判断・信頼関係の形成等にかかわる支援水準を全市的に担保するには、インテンシヴな実務研修が必要です。
みなさんとても熱心に参加されていました
子ども虐待の対応では児童相談所が最後の砦のように控えていますが、高齢者虐待や障害者虐待の領域は、対応のあり方が良くも悪くも「地域主権」的な規定になっています。そこで、自治体・支援者と市民全体に人権擁護の視点が据わり、支援機関の連携と地域の見守り支援のあり方も加えた「共に生きる」力の真価が、さいたま市の条例に照らして問われることになるでしょう。
今年の10月施行の障害者虐待防止法に先がけて、さいたま市の虐待対応は半年早く始まることとなります。これからの半年間に、虐待対応実務に関する初期段階の教訓や問題点をフィードバックし、10月には『さいたま市障害者相談支援指針-平成24年度版ver.2』として改定する予定です。
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