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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」 2012年02月

「加害者―被害者」の枠組を越えて

 山口県光市で起きた母子殺害事件(1999年)の最高裁判決が下り、被告Oさんの死刑が確定することになりました。被害者家族であるMさんは、死刑判決確定後の記者会見において、「勝者なんていない。犯罪が起こった時点で、みんな敗者なんだと思う」と語っています。まったく同感です。この判決をめぐる報道に接して、私は虚しさだけが残りました。



福岡行の事故の顛末

 ここのところ風邪で寝込んだり、眼に注射を打ったりしていたせいで、一週間ほど棒に振ってしまいました。そうして溜まりたまった仕事でお尻に火がついた状態で、先日、博多への出張に慌ただしく出かけたのです。羽田空港を離陸し、乗客がキャビン・アテンダントのサービスを受けているさなかの出来事でした。



「改革」「刷新」と陳腐化

人間と社会の液状化
 この10年間、現場の支援者から「制度が一向に落ち着かないので、実践的な見通しも不透明になってほとほと困っている」という話をよく耳にするようになりました。昨今の「改革」「刷新」「技術革新」は、ものごとの解決や改善に目標があるというよりも、旧来の秩序と慣習を解体してシステムとその構成単位を液状化させ、常に「落ち着かない」流転の状態を創り出すことによって、金融とサービスのビジネスチャンスを恒常化するための仕掛けだということができるでしょう。
 このような渦中に巻き込まれて右往左往させられるのは、まことに腹立たしい。万物流転の下でアイデンティティやレーゾンデートルを突き詰めるなんてことは、とても難しいし、途中でバカバカしくなって投げ出すのが落ちです。人間と社会を落ち着けない状況に貶める構造そのものを正視し、批判的に捉えることから出発する以外に手立てはありません。



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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
タイトル:『障害者虐待 その理解と防止のために』
編著者:宗澤忠雄
定価:¥3,150(税込)
発行:中央法規
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