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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

親になった卒業生

 先週の土曜日、卒業生の同期会がありました。子育て現役世代のためにほとんどが子連れであるほか、年末に出産予定の妊婦を含めての集まりとなりました。正午から東京の神田は「有鳥天酒場」での宴です。

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集まった皆さん

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 出席予定だった男性2人が、子どもの具合が悪くて世話をしなければならず、急きょ欠席となりました。私は、土曜日に子どもの面倒を見なければならない夫としての営みを大切にしている卒業生を誇りに思います。それこそ男子の本懐だ、私は遠い空から心からのエールを送っていますよ~!!

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本場香川流の「骨付きもも焼」はやはり旨い!

 集まったメンバーが大学生の当時は、私が子育ての真っただ中で、私の子育てとさいたま市の条例づくりに一段落した今は、彼らが子育ての渦中にいます。
 卒業生が連れてきた子どもたちは、生後8カ月から小学5年生までの幅がありますが、この半年間には東日本大震災と福島原発の事故がありましたから、親としての苦労・心労はさぞや大きいものだったでしょう。

 9月11日付毎日新聞朝刊によれば、東日本大震災以降、イライラが増して「子どもが煩わしい」と感じるようになった母親は首都圏で7割を超え、放射能の子どもの健康への影響を心配する(「とても心配」「やや心配」)母親は92%にも達しています(ベネッセ次世代育成研究所インターネット調査結果)。

 このようにこれまでにない負荷がのしかかる下で、長丁場の子育てをするのですから、親の方が煮詰まったり切れたりしてはおしまいです。長い道中は、山あり谷ありレキ場あり、親の予期しないアクシデントが襲うことも珍しくありません。仮に平坦な道を歩いているようでも、子どもが大きくなるにつれて、子どもへの寄りそい方と距離の取り方については、親自身が揺らぎながら質的に変化する必要に迫られます。

 このような慈しみの営みを、共働きの夫婦が子どもに対する「第一次養育責任」として果たすには、今ほど困難な時代はないでしょう。共働きでも保育所を利用できるかどうかにやきもきし、放射能にかかわる食の安全を守る体制さえ、わが国は十分な検査体制を確保していないのですから、野菜や牛肉の選択から苦労しなければならないのです。

 私の子育てでは、娘が4歳頃までアレルギーの食事療法をしていました。鶏肉と卵はダメで「肉類は牛肉にしてください」と医師から指示されていたのです。今、この食事療法を親としてしなければならないとしたら、背筋がぞっとします。成長ホルモンを投与されて育てられたオージービーフはできるだけ避けたいが、だからといって九州あたりの和牛にするのは財布が耐え難い、さてどうしたものか…、とスーパーの売場を毎日うろちょろしながら悩んでいるのではないかと想像してしまいます。

 それでも、「子どもを育ててみると、これまでの自分のガキさ加減が痛いほどわかるようになりました」と語る卒業生もいて、育児は「育自」の営みにほかならないことをそれぞれに学んでいる姿を眼前にします。子育てという次世代に責任を持つ営みに参加することの、人間の生涯発達にとってのかけがえのない意味を実感するのです。

 すると、宴会の最中、ある卒業生の小学5年になる女のお子さんから、「私のお母さんの学生時代はどんな女子学生だったのですか?」と質問を受けました。女の子の手を見ると、私の答えを書き留めるメモ帳まで用意しています。

 小学5年生といえば前思春期ですから、一度親と自分を対象化し、自分が親を乗り越えていこうとする営みがはじまる頃です。ここは慎重に応えなければ、卒業生の親としての面子をつぶすことになるかも知れない(なんと行き届いたアフター・ケアでしょう)。すでに私の心構えは、あたかも「検事からある容疑者に関する取り調べ」を受ける時のようになっており、この卒業生の「嫌疑」を払う方向で、次のような「証言」をしました。

「あなたのお母さんは、品行方正・謹厳実直・石部金吉を絵にかいたような(?)女子学生でした。はい、この眼で見てきましたから間違いありません。大学生にふさわしい学びをしっかりした上で、まっ、大学生にふさわしい遊びもしっかりしていました」

「ただ、あなたの今後を私なりに考えて付け加えるとすれば、声がバカでかいことと大口をあけてガハガハ笑う点には、大人の女性の品性として一抹の問題を感じたこともありましたね。この点だけは、お母さんを見習わないようにした方がいいかも知れません」(笑)

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親になってこそみずみずしい

 さて、今度は卒業生の中に「宗澤さんの夢を見たんですよ」と、私に関する「預言者」が現れました。
「宗澤さんから寿マークの招待状が届いたので結婚式に行ったら、お嫁さんはヨーロッパ系の美人なのでびっくり! ところが、式にあらわれた宗澤さんの衣装は真っ白のワンピースなので『何これ、え゛~』と、これまたびっくり!!」

 この「預言」の前半は正夢でしょうが、後半は「白のタキシード」の誤りですよ~♪

 ブログ読者の中には、他愛もない会合だという無理解が生まれるかも知れませんが、卒業生が親になったからこそ、気の置けない学生時代の連がりで集まり、ホッとできる「間」が大切なのだと受けとめています。それは、利害のない学生時代の間柄のかけがえのなさを意味するし、ともすると順調な人生を送る卒業生だけの集まりがちな、わが国の「排他的な同窓会文化」とは異なるちょっとすてきな集まりではないかと思っています。


コメント


先日はご来店誠にありがとうございました。
年に1度の先生を囲っての会を、有鳥天酒場で2年連続でやっていただきまして、私自身も飲食店の存在意義を感じることが出来嬉しいです。
今後とも、ご機会がございましたら、是非お気軽にお立ち寄りください。


投稿者: 有鳥天酒場 戸張賢治 | 2011年09月14日 22:28

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
タイトル:『障害者虐待 その理解と防止のために』
編著者:宗澤忠雄
定価:¥3,150(税込)
発行:中央法規
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