条例づくりの今
新学期は何かと忙しい時期です。新入生と進級者への対応にオリエンテーション、新年度の受講生の履修に関することなど、この時期ならではの仕事が、予期せぬことを含めて入ってきます。
ところが私のほうはといえば、さいたま市の条例づくりのために、年度替りの節目がもてない毎日でしたから、寒暖の差の激しい近頃のお天気のように、いつまでが冬でいつからが春なのかまったく分からないような感じです。それでも、さいたま市の条例づくりは試行錯誤を重ねながら着実に前進しています。
先日のブログでもご報告しましたが、第1回目の100人委員会が大勢の参加者を得て開催され、活発な議論が始まりました。また、地域の関係団体(教育・医療・福祉・雇用・交通等に関する業界団体など)に対するヒアリングも開始されました。まずは、交通事業者への第1回ヒアリングが開かれ、ノンステップバスのスロープが道路の態様によってはまったく使えない問題点やバス・電車等の車椅子利用に伴う「事前連絡」がどういうわけで生じているのかなどが話されました。
このヒアリングは関係団体の責任を追及するためのものではなく、事実を明らかにしながら、事業者とともに不利益や不自由が生じている事実・問題構造と改善課題を共通認識にすることを目的としています。
昨日は、第4回条例制定専門委員会が開かれ、この間に開催された100人委員会とヒアリングの総括とともに、条例の目的についての議論に多くの時間を割きました。この点についての結論をいえば、「(障害の有無に拘らず)すべての市民の人権と尊厳を守る」という内容に目的を明快に絞り、障害者の権利条約を直接的に受けた目的とすることが委員会の一致でした。これは、100人委員会の参加者のご意見からも、これまでに収集された差別事例集からみても、異論のない一致点になると考えています。
条例の目的はこのように愚直なまでに「人権と尊厳を守る」という点に置いて、その実現をはかるための手立てやさいたま市の施策のあり方が、今後さらに具体的な形となるようにすることが課題になっていきます。
さて、明後日の4月24日(土)には、午後1時30分から知的障害のある人に向けた条例づくりの学習会を開催します(場所:さいたま市障害者総合支援センター、講師:宗澤)。この学習会へのご参加もお待ちしています。学習会の取り組みは、条例が制定される時に、知的障害のある人や一般の小学生にも読んで理解できるような条例文(平易版)も策定されるようつなげていく目的ももっています。
このようにして、条例づくりの営みは途切れることなく歩みを進めています。したがってまた、私の労働も途切れることなく続いていくのですから、眼のほうは大丈夫なのでしょうか?
ただ、大学に籍を置く立場からいえば、このような私にとってのフィールドワークの成果をリアルタイムでキャンパスの中に還元することは至難の業ですね。このような営みの中に学生を参加させることによって、個々の学生やゼミの学びを促進するという道筋もあるでしょうが、研究者が自らの研究にまで仕上げることによってしか、本来的にはキャンパスの中に還元することができないという重い課題性を回避することはできないでしょう。
コメント
一大学生としての意見ですが、是非リアルタイムでフィールドワークの成果を知っていきたいです。
無論、先生方が忙しくなるのは承知の上ですが、さいたま市の条例作りに関して(特に私は障害者の条例作り)に非常に関心があるので、講義を通してでも、ブログを通してでも、形はどうであってもかまわないので、情報提供してくださるととてもありがたいです。
責任追及を目的とするのではなく、不利益や不自由が生じている事実・問題構造と改善課題を共通認識にすることを目的とする点について、非常に良い方向性だと感じました。
ノンステップバスがあるのに、道路のせいで、そのスロープが使えない。「ノンステップ」の意味がないよなと思う。バス自体はノンステップなのかもしれないけれど、道路がバリアーになっているなんて、なんか馬鹿げてるとも思う。車いすの人はもちろん、ベビーカーを押す人や杖をついている人にとっても、ノンステップはありがたいもの。道路の「ノンステップ化」はいつになるのか。さいたま市の条例で、「バス停付近の道路整備の責任」みたいなのを作って欲しいと、個人的に思う。
「(障害の有無に拘らず)すべての市民の人権と尊厳を守る」という内容に目的を絞るのは、とても素敵なことだと思う。本当の意味で、住みやすい街(市)はいつになったら出来るのか。さいたま市が、「住みやすい街第一号」になったら嬉しい。
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