条例づくり100人委員会がスタートしました―さいたま市
この3月30日にさいたま市与野本町コミュニティセンターにおいて、第1回条例について話し合う100人委員会が開催されました。
障害当事者・市民の参加者は92名、グループ討議で書記係をつとめた市職員が10名、傍聴者は約20名と、大勢のみなさんが集い活発な討議をする委員会となりました。これから9月までの間に、最低10回の開催を予定しています。
写真1 条例づくり100人委員会
この100人委員会は、「誰もがともに地域に暮らせるノーマライゼーション条例(仮称)」づくりについて、地域の声と実情を議論するための出発点であり、土台に据えて進めるためのものです。ごく簡単に言えば、この条例は、当事者・市民が人権主体であることを実感できるような地域社会づくりを目指そうとするものですから、条例づくりそのものから当事者・市民を柱に据えて、広範囲な参画による協働を組織する過程でなければなりません。
最初の委員会ですから、初対面の人も多く、条例づくりや障害者権利条約に関する理解にもそれぞれの到達点があるでしょう。そこで障害種別を問わない10名ずつ程度のグループに分かれ、(1)地域で体験してきた差別や悩ましい思いを出し合うこと、(2)この条例づくりに望むことの2点を最初の主な議題に据えて当日の話し合いを進めました。
写真2 参加者は活発に議論を進める
まず、活発で熱の入ったグループ討議が進みました。あらゆる障害の混在したそれぞれのグループでは、自らの実体験をもとにした生の現実が多彩に深められていきます。
車椅子の人からは、駅の階段昇降機を使おうと申し出たものの駅員は使い方を知らない、ようやく使える状態になったら「油切れ」で動かない、旅行に行くためには介助者は一切使えない、入院中は介助者が病室に入れない…
視覚障害のある人からは、「マッサージ師の資格がないのね、それじゃ就職は難しいね」とけんもほろろだった、ガイドヘルパーと移動中に駅員に訊ねごとをしたら自分とは話さずにガイドヘルパーとだけ話しをする…
写真3 手話通訳を交えての発言とミーティング
聴覚障害のある人からは、宅急便等の「ご不在連絡票」は音声電話の番号案内だけでファクシミリ番号が記載されていないからどうすればいいんだ、警察官が交番に不在中も「ご用の方はお電話を」と音声電話しか設置していない、警察・病院等で緊急の用件で行っているのに何らコミュニケーションが保障されない…
精神障害のある人からは、20年間の入院中に「君は身寄りがないから退院させることはできない」と主治医にさとされ続けてきたところ主治医が変わった途端、「近くに社会復帰のための施設もあるしグループホームや仕事を保障してくれる福祉の事業所があるよ」と教えてくれてようやく退院となった、精神障害のある娘が妊娠したところ「うちでは診れないから自分で病院を探してください」と他の医療機関への紹介に責任をもつのでもなくまるで「トカゲの尻尾切り」のように扱われた…
まだまだたくさんの事実があるのですが、とてもここでそのすべてを紹介しつくすことはできません。当日の詳しい議事録は、さいたま市の条例制定ウェブサイトに近日中に掲載されますのでそちらをどうかご覧下さい。
今回の100人委員会の討議の様子は、どこかの国の議会よりはよほど民主主義を創るにふさわしい参加者の姿勢・資質、討議の内実があったと感じました。さぞや悔しい体験と思いの連続するような日々だったでしょう。多様な発言をお聞きしていると、あたかもこの世のあらゆる「人権侵害標本集」ができるほどに深刻な現実があることを正視しないわけにはいきません。
写真4 ときには喜怒哀楽の渦に包まれて
それでも、それぞれの発言にみなさんが耳を傾け、ときには喜怒哀楽の渦に包まれながら参画による討議を進めることができたことは、今後の条例づくりに資する間違いのない大きな力がマグマのように胎動し始めたことを意味します。
みなさんからは条例がどこまで実効的なものとなるかの不安や、もっと一般市民への参画の拡がりをつくらなければいけないという声も寄せられました。このような不安やご意見への対応を含めて、条例検討専門委員会は、みなさんの声をもとに、あらゆる差別が最大限に克服され、安心して暮らし、暮らしのゆたかさを実感できるような地域社会づくりを担保することのできる条例をつくっていく責任があることを改めて痛感します。
写真5 各グループからのまとめの発表-長崎平和祈念像のようなポーズのワンショット
100人委員会の議事録だけでなく、条例づくりに関するあらゆる資料は、紙媒体の資料、知的障害のある方や子どもたちにも理解しやすい表現に改めた紙媒体の資料、点訳資料、朗読テープ資料および電子ファイル資料の5つの形でご用意しますから、遠慮なくさいたま市障害福祉課までお問い合わせ下さい。また、100人委員会への参加は現在も随時受けつけています。
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