『網膜色素変性症ってなに?』を読んでいたら
さいたま市の「ノーマライゼーション条例」づくりにかかわる条例制定検討専門委員会の中に、「網膜色素変性症」によって中途失明された嶋垣謹哉さん(公募委員)がおられます。この疾患は、眼の難病といわれてきたものです。
嶋垣さんは同じ疾患・障害のある人たちとともに2008年8月、NPO法人網膜変性研究基金(愛称:もうまく基金)を立ち上げ、このたびこの疾患・障害に関する啓発パンフレットを完成されました。
写真1 「網膜色素変性症」の啓発パンフレット・表紙
写真2 同・目次と最初のページ
このパンフレットは、大部分が漫画で構成されているためとても分かりやすいものとなっています。
内容は、まず、この疾患・障害の医学的な症状・視力に現れる不自由・生活上の困難が明らかにされ、次に、現在の医学的な治療の到達点と今後の展望を拓くための資金の必要性が提示されます。最後に、この疾患を持つ人たちがさまざまな人たちの支援や福祉機器によって自立生活に向かっている姿とともに、治療研究への支援を訴えるものです。
このパンフレットを読んで、まず、「網膜色素変性症」という難しい名称の疾患・障害がとても分かりやすくトータルに解説されていることに私は感心しました。少なくとも小学校の高学年以上であれば何の問題もなく理解が進むでしょう。
次に、パンフレットの目的は治療研究支援のための「基金」に置かれてはいるのですが、この疾患を持つ人たちのことを「障害のある人=もっぱら支援の対象」という描き方をするのではなく、必要な条件さえあればそれぞれに自立した輝きを放つ生活と人生の主人公だという方向性を明確に提示していることが分かります。これはすなわち、障害者の権利条約の考え方です。
このパンフレットはお薦めです(お問い合わせは次のホームページへどうぞ。もうまく基金ホームページ http://www.moumaku.jp/)。
さて、このパンフレットを読んでいるさなかに奇妙なことに気づきました。マンガの枠がゆがんで見えるのですよ、「なにこれ、え゙~!!」。
昨年末から、原稿7本を仕上げなければならない、さいたま市では5つの委員会・協議会に入って股裂き状態、これらの委員会等の運営にはユルゲン・ハバーマスの「討議と人権」に関する知見をもってまで臨んでいるにも拘らず感覚的で根拠のない「横槍」を入れる輩が後を絶たない等々、文字通りの「忙殺」状態が続き、「最近視力が落ちているなぁ、眼精疲労かなぁ」と思っていたのです。
慌てて眼医者に飛んでいって精密検査を受けたら「これは、中心性網膜症ですね」とドクターは涼しげにおっしゃいます。「医学的には原因ははっきりしないのですが、(1)男の中高年、(2)仕事による過労とストレス、(3)生真面目な性格、という三つの条件の重なりが多くの場合に確認されます」(診察室で大きく頷く私)。
これら三つの条件は、全部ドンピシャではありませんか((3)にいささか無理があるという方は、どうぞ遠慮なく私の研究室までお越し下さい)。
現在、右眼は正常ですが、左眼だけで人の顔を見るとムンクの作品「叫び」のように歪んでみえます。そして、ふつうに両目を開いて外界を見るだけでイライラっとなって、今度は心の運びがムンクの「叫び」状態。ここで、網膜色素変性症の当事者の皆さんたちが、建設的な啓発パンフレットを作成されたことには、改めて頭の下がる思いが込み上げてきました。
このような中にあっても、中央法規出版『医療福祉相談ガイド』の「知的障害」に関する項目は全面改訂の作業中です。ただ、中央法規出版の担当者の方には、私の苦労も分かってほしい…。
コメント
宗沢先生、日頃よりたいへんお世話になっております。嶋垣でございます。
職場で偶然グーグルの「網膜色素変性症」のアラートを音声で聞いていましたら、本コラムと遭遇いたしました。(ニコニコ)
Webでのご紹介、また、身に余るご評価をいただきどうもありがとうございます。
献身的にブックレット「網膜色素変性症ってなに?」の編集をしてくださいました、もうまく基金の大切な支援者であるTさん(本業はプロの編集者)がとっても喜んでくださると思います。ありがとうございます。
なお、このTさんは晴眼者、私たち患者やその家族、治療法の研究者や眼科医などの医療従事者当等と、もう何年も積極的に関わってくださっておりまして、今回のブックレットもほとんどすべてがこのTさんの発想と構成で作られています。
私は、このようなTさんがいっしょに目標を目指して、いろいろな場面で手助けしてくださったり、思いを馳せていただけることを本当に誇りだと思っています。
実は、このTさん、先日のキックオフシンポにも来られていたんです。彼の感想は「車椅子に載った若いお嬢さんたち、とっても可愛い子が多かった!」ですと!!
まあ、こんな会話が、障害を持った人と持っていない人との間で普通にできるようになることが理想ですねぇ~!条例作り、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!!
私は今まで網膜色素変性症という病気について知っていることはほとんどなく、名前を聞いたことがある、というだけの知識でした。
このブログを読み、興味を持ってパンフレットを読んだことで、自分の無知を恥じることになりました。
私は視力は悪いですが、目は正常に機能しています。そのため、いつ目が見えなくなるかもしれないという恐怖を感じている人々の気持ちを真に理解することはできません。
しかし、今まさにパソコンの画面を見つめているこの目が見えなくなれば、どんなに不自由で、どんな絶望を味わうのかを想像することはできます。
考えただけでも恐ろしく、パンフレットでも描かれていたように生きる意味を見失ってしまうかもしれません。
知らないことは恥ずかしいことではないと言いますが、無関心であることは一番あってはならないことだと思いました。
自分が知ったことを、小さなことから今後に役立てていきたいと思います。
私は、網膜色素変性症の病状を今回のブックレットで初めて知りました。
治療の方法も研究段階で、根本的な改善政策が取れない進行性の難病(視野狭窄・明暗の分かりづらさなど)であることなど、多くのことを学ぶことができました。
そして、ブックレットでこの難病・困難に真正面から社会に貢献していく方々の姿勢を知り、感銘を受けました。
この難病を知らない私は、目をつむった時の行動にとても恐怖を感じます。この恐怖を克服し、社会活動を一般の人と同様に活動していく努力には、とても感動しました。
また、周りの人も理解し合い、同じ立場で協力・助け合うことができるのは、この難病に立ち向かっている方々への真の協力者であると思います。
私も、この難病だけでなく、障害を抱えた方々に対する思いやりを常に持ち、少しでもお役に立つように私自身、或いは、小集団活動などに積極的に参加していきたいです。
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