地域社会の一員として1-佐賀県地域共生ステーション その3
私が足を運んだ佐賀の地域共生ステーションでは、利用者だけでなく、支援者の皆さんもとても活きいきされていました。それは、「私たちは頑張っています」というような気負いによるのではなく、「地域社会の一員として根を張っている」事実に由来するものと感じます。つまり、ここの支援は「ヨコ・ナナメ」の関係性を基軸として展開されているものであり、そのことが利用者だけでなく支援者にとっても、風通しのよい安心感とやりがいをもたらしていると考えることができます。
それでは、地域共生ステーションが「第2の家」と呼ぶにふさわしく、「地域に根を張る」取り組みの要点とは、どのようなものなのでしょうか。今回と次回の2回に分けてご紹介しましょう。
写真1 NPO法人のんびらあと代表の江里口尚子さん(右)と息子の翼さん
写真2 ぬくもいホーム太陽では、猫までのんびりとお出迎え
笑いあり、涙あり-佐賀県地域共生ステーション その2
佐賀の地域共生ステーションの視察を進めるうちに、どのステーションにも共通して、落ち着きと安らぎのあることに気づかされました。何よりも「ホッとする」場所なのです。
もちろん、活きいきとした暮らしに必要不可欠な笑いのあふれる会話があり、一週間も実習させてもらえば、涙あふれる場面にも間違いなく出くわすことでしょう。
まさにここは、民衆が集い、支え合う親密圏を地域社会の中の一つの拠点として構成しつつあるように思えます。それは、1980年代後半に始まった「住民参加型在宅福祉サービス供給組織」による「有償ボランティアサービス」ではなく、介護保険法や障害者自立支援法等の制度サービスを組み入れた社会的な事業による「地域相互支援サービス」という特質を持つものです。
写真1 宅老所「柳町」〈NPO法人たすけあい佐賀〉にある掲示
写真2 ぬくもいホーム「ほのぼの長屋」〈NPO法人のんびらあと〉の玄関掲示
佐賀はよかとこ-佐賀県地域共生ステーション
9月末から今月のはじめにかけて、佐賀と長崎における地域支援の実情視察に出向きました。これからしばらくの間、まずは佐賀県の独自事業である「地域共生ステーション」(宅老所・ぬくもいホーム)を取り上げます。佐賀県地域福祉課の松瀬弘副課長をはじめ、この視察にご協力を戴いた大勢の皆様方に、ここに改めて深くお礼申し上げます。
障害の有無に拘らず、子どもからお年寄りまでを対象に「通う」「泊る」そして場合によっては「住まう」のサービスを切れ目なく提供する地域共生ステーション。この夢のようなサービスは「言うは易し、行いは難し」で、考え方に異論はなくとも、その実現には様々な困難があるように思えます。支援の実際、対象別の法制度とのバッティング、事業所の運営のいずれをとっても難しさを感じる上、仮にこれらの多くがクリアされたとしても、このようなサービスが佐賀で実現するに至った経緯はどのようなものであったのか?
幾多の疑問と期待に胸を膨らませて、私は羽田空港第2ターミナルから佐賀へと向かいました。
写真1 出発直前の羽田空港第2ターミナル
写真2 無料開放の佐賀県庁新行政棟展望ホールから佐賀平野を一望する-左が県立図書館、手前が県庁、中央奥が市村記念体育館、県庁全体が佐賀城のお堀に囲まれている
入所型施設とグループホーム・ケアホーム
この間、「住まいと暮らし」にかかわる話題にブログを割いてきました。それは、都市部における障害のある人のグループホーム・ケアホーム(以下、ホームと略)のあり方に関する研究をテーマの一つにしているからです。