支援することと、書くこと
去る4月18日、厚生労働省は「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」の初会合を開き、介護に携わる職員がやりがいをもって働ける環境づくりに向けた議論を開始しました。
このような動きに先立ち、介護だけでなく、広く福祉の領域で働く職員の労働条件やストレスの実態について、関係するさまざまな団体・労働組合などが調査を実施し、厳しい現状を明らかにしているので、この研究会の議論が実り多い成果を生むことを願わずにはいられません。
利用者主体の「笑顔」
「利用者主体」という言葉は現在、福祉の世界で当たり前のように使われています。都市部の自治体でも、地域住民を相手に「お客様」と呼び習わすことが定着してきました。
私が高校生のときに読んだ筒井康隆氏の小説には未来のお役所の姿が描かれ、役場の職員が「税金を払っていただいている住民のみなさまに、とことんサービスしちゃう」という下りがありました。それでは、SF小説に描かれた時代がやってきたのかというと、あたり前ですがそうではありません。
植村牧場
一年ほど前に訪れた、奈良の植村牧場。大仏殿にほど近い場所で、聖徳太子ゆかりの通称「コスモス寺」として知られる般若寺の傍らにあります。「天平の甍」に囲まれた1500坪の牧場は、のどかな佇まいをみせています。ここは、「株式会社」でありながら、従業員の大半を知的障害のある人たちが占めています。
子育ての疲れから
福祉の仕事と一口でいっても、多様なものが含まれます。およそ日常生活のすべてにかかわるサポートが仕事になりますから、支援の内容・類型、それに職種等も実に広範多岐にわたります。その上、今の日本の福祉職場には、同僚との行き違いにコンフリクト、過重な労働などがなかなか避けて通れない現実としてあります。
それぞれの利用者の個別性の高い生活ニーズに応えていくという営みだけでも大変な仕事なのに、職場の人間関係や過重労働まで加わると、イライラが続いたり、場合によっては、バーンアウトに陥るリスクもあります。ここには、産業医学や労働科学の専門家が、本来ならば科学的に解明すべき福祉の従事者の疲労と休息についての課題があるでしょう。
私がこのブログを通して綴りたいのは、多忙な福祉の仕事に携わるみなさんに、「ちょっと一服」してもらえるような「休息の場」をつくることです。そうして、福祉の職場で働く人にこそ、「人たるに値する」日々の喜怒哀楽を洗練していただければと願います。