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梶川義人の「虐待相談の現場から」

人権擁護・ハイ

 先日、公益財団法人人権教育啓発推進センター様からのご依頼により、人権啓発指導者研修で高齢者虐待についてお話をさせて頂きました。そのため、私の灰色の脳細胞が刺激されたのだと思いますが、帰りの飛行機のなかで、人権教育や人権啓発について、あれこれ思いを巡らしました。

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 基本的人権の尊重は、わが国の憲法における、国民主権、平和主義とならぶ三大原則の一つです。ですから、虐待の分野別の取り組みより、ずっと本質的なことだといえます。そして、人権に関する法整備の中心は法務省の人権擁護局にあります。さらに、生命、財産など個別具体的なことは、担当する省庁が法整備をしています。そのため、当然といえば当然かもしれませんが、児童虐待、DV、障がい者虐待、高齢者虐待、いずれも元をたどれば、基本的人権の侵害とその救済の問題に行き着きます。

 高齢者虐待についてみると、高齢者虐待防止法の成立以前、すでに法務局や地方法務局が扱う人権侵犯事件の調査や処理に関する事務の取り扱いに必要な事項を定めた「人権侵犯事件調査処理規程」に含まれていました。私たちは、法律ができると、その法に基づいて対応することは考えますが、法律ができるまでの歴史については忘れてしまいがちです。しかし、基本的人権について考えるのは、虐待の問題に取り組むうえで、初心を忘れないことに等しく、とても大切であると思います。

 事例への対応という視点からみると、人権擁護はジェネラリスト・モデルの実践であり、虐待の分野別の対応はスペシャリスト・モデルの実践だといえます。つまり、人権擁護を軸にすれば、分野横断的にも組織横断的にもとらえることができます。もちろん、児童虐待、DV、障がい者虐待、高齢者虐待について、それぞれ単独法として成立していますので、実務上の分野横断や組織横断は、そうたやすくはありません。しかし、少なくとも、教育や啓発については、より連携を強化していくほうが、ずっと効果的だと思います。

 大きなことを言うようですが、そのほうが、国が全体として良い方向に進んでいくような気がします。私が思うに、国の先行きの良し悪しは、人権意識を持った人の多寡次第で、大きく異なると考えるからです。これは、11月22日NHK Eテレ午後11時~午後11時54分放送の「リーダーシップ白熱教室第4回 1%の変革が世界を変える」で、講師のハーバード大学ケネディスクール行政大学院のロナルド・ハイフェッツ(Ronald Heifetz)教授の仰った「リーダーの役割」に通じるものです。

 教授の話を私なりに要約すると、「人間のDNAはチンパンジーと1%しか違わない。しかし、大きな進化を遂げた。文化もまた同じように、たった1%違うだけで革新される。そして、あらゆる問題の解決策は、すでに自分たちが手にしているものが元になる。しがたって、リーダーの役割とは、文化のなかで、温存するか破棄するかを、複眼点に判断していくことにある。ただし、私たちには、変化を嫌う温故主義の文化もあって、責任を転嫁したり問題から目をそらしたりして、革新を回避したがるものだ。そのため、これに対抗するのもリーダーの役割だ」となります。

 そこで私は、「複眼」のなかに「人権擁護」が含まれたリーダーの養成が必要不可欠だと考えたわけです。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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