出会い、介護の世界
人の考え方や行動パターンは、さまざまな縁に起因します。
私の父は上州(群馬)生まれで、酔えば幼い私をおぶって「♪泣くな妹よ妹よ泣くな…」(赤城の子守唄)や「♪男心に男が惚れて…」(名月赤城山)をよく歌ったものです。だから私の父親像も憧れの対象も、国定忠治を代表とする渡世人でした。
渡世人でも堅ぎでも、生きる世界には表も裏もあり、白か黒か、善か悪か、勝ちか負けかでは割り切れません。割り切れないから、遣り切れないのです。その遣り切れなさ、哀しさの中に、奥深さや面白みもあります。
子どもの頃からアイドルや正義の味方的なヒーローに興味がなかったのは、影のない明るさや単純さが面白くなかったからだと思います。私が魅かれるのは、矛盾を抱えなからも、懸命に真っすぐ生きようとしている人です。法の定めや世間の常識・評価ではなく、人の情や自らの矜り(ほこり)に従って生きる人。たとえば浅田次郎著「壬生義士伝」の“吉田貫一郎”だったりします(浅田次郎が描く渡世人、落ちこぼれの武士、盗人はみな魅力的です)。
介護は奥深い。人も人生も割り切れない、その割り切れないものを扱う仕事だから楽な稼業ではありません。人を理解するのは身体を張った真剣勝負だから、体力のない人、人間に相対する気のない人、楽して稼ぎたい人には向きません。でもそのかわり、わくわくするような生きている実感があり、本物の魅力的な人間に出会うことができます。
私の知人には、高校卒業後、組に入るか介護に進むか迷って、介護の仕事に就いた人がいます。その迷い方は当たっているような気がするのです。「士は己を知る者のために死す」と司馬遷の『史記』にはあります。男は、自分のことをきちんと認めてくれた人のためには命がけで尽くす、という意味らしいです。女の私は、人間なら誰でもそうだと思います。命がけでと思える人や仕事に出会う、それはとても幸せなことです。実は、そんな出会いがあるのが介護の世界なのです。
7月に『介護リーダーの条件』という本が雲母(きらら)書房から出版されました。一般的なリーダー論ではなく、介護の現場で悪戦苦闘、試行錯誤を続けている人たちの実践報告集です。その人たちの想いの深さに出会って、介護の奥深さに出会ってほしいと思います。
(下山名月)
コメント
はじめまして、初めて投稿させていただきます。
介護は本当に一期一会だと感じています。上野さんと下山さんのプログを見て驚きました。
近いか遠い未来かわかりませんが、自分が作りたい施設の名前が「皆護家 一期一会」だからです。
みんなでまもるいえ であいがあり わかれあり、その中で人として生きるをテーマに接していける施設を作りたいと実現できたらなと思っています。
まだまだ未熟者ですがお互い介護職人としてその道を求め続ける求道者でありましょう。これからもプログ楽しみにしています。
失礼ですが、吉村貫一朗では?
名月先生が大好き!基本の“き”何度講演を聴かせていただいても、あきる事のないお話に引きずり込まれるのは、私だけ?
また来月松山の介護センターでの身につくお話! 楽しみにしております。
6日・7日…職場に無理を通して休みもらいました。本当に楽しみで年甲斐もなくワクワク・どきどき…
私も、先月松山介護センターで「基本のき」を受講した者です。本当に楽しくて、素晴らしかったです。下山先生に教えて頂いた介護技術を思い起こしながら、仕事に取り組んでいると、あれだけ悩まされていた腰痛が緩和されたのです。
今月「偽ベテランから本物のベテランへ」という下山先生の講座にも、仕事場から行かせてもらえる事になり、めっちゃ幸せです。
ひとつ覚えたらみっつ忘れるこのトンチンカンな頭ですが、しっかりノートに書き留め、私のマニュアルとして、活用していきたいです。
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