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上野文規・下山名月が全国で触れた、出会いは一期一会

彼らを主体・主役に、そして彼らと共に

 ある知的障害者授産・更生施設に行ってきました。利用されている約80名の方の平均年齢は54歳だそうですが、「障害のある方の場合は、実年齢に20歳をプラスして考える」といわれるので、かなり高齢化が進んでいることになります。
 「介護が必要となっても最期まで看ることができるよう、今のうちに介護の勉強をして力をつけておきたい」と、企画された研修会に呼ばれたのです。しかも、3月に退任された前施設長が、退職金から置土産にと費用を出してくださったとのこと。心引き締まる思いで出かけていきました。

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 施設に足を踏み入れると、利用者が近づいてきてあいさつをしてくれ、自ら名乗って私の名前を尋ねたり、握手を求めたり、得意芸を披露してくれたりと、全身で歓迎してくれました。皆の明るさ朗らかさ、率直さ、屈託のない笑顔、仲間を気遣い助け合う姿が眩しく、「心に光が射し込み満ちるようだ」と感じました。
 ふと「『この子らに世の光を』ではなく『この子らを世の光に』」の言葉が思い浮かびました。誰の言葉だったか?……自宅に戻って調べると、それは「近江学園」を設立した糸賀一雄先生の言葉でした。その発見の瞬間の鳥肌がたつような感慨の深さ、なぜならその施設こそ、糸賀先生が、制度もない頃私財を投じて開設した施設でした。「この子らを…」の言葉が閃いたのは偶然ではなかったのです。
 記事に感銘し切り抜いて保存してから10余年、こうして本物に出会えるとは、飛び上がりたいくらいの感動。「彼らを主体・主役に、そして彼らと共に」の取り組みが、どれだけ双方を生き生きさせ豊かにするか、介護の原点を教えられた2日間でした。(下山名月)


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プロフィール
上野文規・下山名月
(うえの ふみのり・しもやま なつき)
上野文規
介護総合研究所『元気の素』代表。専門は「地域ケア論」「ケースマネジメント」。全国を講演・講座・指導に飛び回るかたわら、施設などの開設準備にともなう「ひと・もの・はこ」の総合プロデュースを手がける。著書に「遊びリテーション学」(雲母書房、1999年。共著)、「入浴介護実践集」(ブリコラージュ、2002年)、「新しい痴呆ケア」(雲母書房、2004年。共著)などがある。

下山名月
民間のデイサービス「生活リハビリクラブ」創始者。現在は生活とリハビリ研究所研究員、元気の素スタッフとして、全国の老人関係施設への実技指導や講演、講座の講師などを務める。著書に「遊びリテーション学」(雲母書房、1999年)、「安全な介護」(ブリコラージュ、2004年。いずれも共著)などがある。
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