持続可能な支援
監獄人権センターに届く手紙の内容は、日常の出来事というよりも、何かひどい人権侵害を受けているという相談の方が圧倒的に多く、そして、私たちはそれを改善するために政策提言をしてきました。
なので、このブログで紹介する内容も自然と「刑務所ではこんなひどいことが起こっているんです」という内容になりがちでした。
私自身も監獄人権センターに関わりはじめた当初、大学生だった頃は、「こんなひどい人権侵害を受けているなんてかわいそう、なんとかしなくては」なんて思っていたこともありましたが、たくさんの相談の手紙を読みアドバイスをするようになると、「かわいそう」という思いだけでは支援を続けることができないということがとてもよくわかりました。
私が監獄人権センターで仕事を始めた頃はまだ1週間に2~3通しか手紙が来ておらず、簡単な情報の問い合わせや、時には深刻な内容の相談が寄せられていました。しかし、2003年に名古屋刑務所事件が明るみに出てからは監獄人権センターの存在も知られるようになり、相談の件数も増え、その内容もさまざまになってきました。
もちろん、今でも医療の問題や、刑務官から暴力を受けた、人権侵害を受けた、など深刻な相談が圧倒的に多いのですが、中には「ひょっとしたらこの刑務官とのトラブルは受刑者本人が招いてしまったのではないかな」と思われるようなものもあったりします。
手紙を読んでいると、「私が刑務官だったらきっと腹が立つだろうな」と思うようなことを口に出してしまう人もいて、「どうしてこんな口のきき方をしてしまうんだろう」なんて思うこともあります。ただ、このように人との接し方がうまくできないというのも、受刑者がそれまで生活してきた環境にも関係していて、全てを受刑者本人のせいにすることはできません。
どのような返事を書いたら良いのか迷うこともありますが、私たちが手紙を受け取って返事を書くことで「あなたのことを見ている人もいますよ」というメッセージを送り続けているのです。
私たちNPOにできることはとても限られているので、時には受刑者やその家族から「何もしてくれないじゃないか」と恨みごとを言われることもあります。
しかし、それでも、その人たちにとって、いつでも手紙を書いて胸のうちを吐露できる場所があるということだけでも大切なことなんだと思っています。
受刑者が「自分の話を聞いてくれる人がいる」ということを知って、前向きな気持ちになることが社会復帰の第一歩なのではないかと思います。
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