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秋山映美の「監獄から社会へ」

「ハーモニー 心をつなぐ歌」

 先日、「ハーモニー心をつなぐ歌」という映画を見ました。
 韓国の女子刑務所に実在する合唱団の活動を題材に映画にしたものです。
 ところどころフィクションと思われる部分もありましたが、監督は、合唱団に所属していた元受刑者から聞いたエピソード、実際に刑務所を尋ねて複数の受刑者にインタビューして聞いたエピソードを織り交ぜてストーリーを作ったとのことです。

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 この合唱団は、1997年から活動をはじめ、年に1~2回ほど刑務所の外で公演をしていて、受刑者の改善更生に貢献しているとのことです。
 日本では、刑務所の活動はほぼ中でのクラブ活動のみで、刑務所の外に出て披露するということはあまり聞いたことがありません。
 韓国は近年、ヨーロッパを参考に刑務所運営をしているのですが、このような話を聞くと日本との違いを感じます。
 以前、韓国の刑務官にお話を伺う機会があったのですが、刑務所内での行いが良い場合の外出や外泊がうまく運用されている印象を受けました。

 主人公は、刑務所の中で出産し、子育てをするのですが、韓国の制度では出産後18ヶ月しか子どもを手元においておくことはできません。
 映画の中では、雑居室で他の受刑者も一緒に子育てをしていましたが、実際の刑務所には、雑居室ではなく子育て用の別の部屋があって、そこで母子ともに過ごすそうです。
 監督は、女子刑務所を何度も訪ね、できるだけ部屋の雰囲気などを実物と同じようにしたそうです。映画の中で子育てをしている部屋には、かわいらしいおもちゃがいくつも置かれていました。
 ちなみに、日本でも受刑中に出産したときには、12ヶ月まで刑務所の中で育てることができます。

 「ハーモニー」の主題は大きく2つありました。母親の子どもに対する愛情と合唱に参加することで変化する受刑者の心です。
 また、監督は死刑制度についても見る者に問いを投げかけています。

 映画の中での主要キャストは、殺人など重大な罪を犯したという設定になっていますが、女子刑務所に長期服役している受刑者の多くは、DVの被害者だったり、弱い立場の人たちで、何かの弾みで相手を殺害してしまったということが良くあるそうです。
 映画なので、ところどころ「これは実際とは違うだろう」と思うところもありましたが、受刑者の気持ちの変化が丁寧に描かれていて、最後は刑罰や刑務所の役割について考えさせられるものでした。
 劇場によってはまだ上映しているようですので、ぜひご覧ください。
 また、主演の俳優と監督のインタビューがこちらに掲載されています。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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