受刑者の健康診断
先週のブログのコメントで、受刑者も健康診断が必要なのでは?とありましたが、受刑者も年に1回、各施設で健康診断を受診しています。
刑事被収容者処遇法第61条では「刑事施設における収容の開始後速やかに、及び毎年一回以上定期的に、法務省令で定めるところにより、健康診断を行わなければならない。」と規定されています。
健康診断の内容は、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(法務省令)の第29条で、以下の項目について行うことになっています。
一 既往歴、生活歴及び家族の病歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の検査
三 身長及び体重の測定並びに視力及び聴力の検査
四 血圧の測定
五 尿中の糖及び蛋白の有無の検査
六 胸部エックス線検査
七 血色素量及び赤血球数の検査
八 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査
九 血清総コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査
十 血糖検査
十一 心電図検査
ただし、身長、視力、聴力の検査や五から十一までの検査項目については、「医師が法務大臣が定める基準に従って必要でないと認めるときは、健康診断を省略することができる」ことになっているので、実際は毎年の健康診断がどこまで行われているのか定かではありません。
受刑者から届く手紙を読む限りでは、省略できる検査のうち、胸部エックス線検査はなされているようです。
以前、いくつかの刑務所内で結核の集団感染が起こったことがニュースになっていましたが、そのうちの一つでは、ひどいセキをするようになった受刑者を刑務所の病舎(刑務所内で病気になった人が収容される部屋)に収容し続け、病舎のお世話を担当する受刑者に結核が感染したという報告がありました。
※刑務所の中では、基本的には自分たちのことは自分たちで行うことになっていて、懲役作業として、工場での木工や裁縫などの作業だけでなく、受刑者の食事の準備や受刑者の衣服の洗濯、病気やハンディキャップのある人のお世話をするという作業をする人もいます。
最初に結核を発症した受刑者は、少し前からひどいセキをしていたので、回りの受刑者が心配していたそうです。
受刑者からは胸部レントゲンの結果がきちんと診断されているのかとの不安の声が寄せられました。結核は、発症しないとレントゲン撮影してもわからないので、1年に1回の健康診断だけでは発見が難しいのかもしれませんが、周囲の受刑者が不安になるほどの症状が出ているようでしたら、すぐに適切な検査をして、適切な治療をするべきだったのではないかと思います。
医療の問題というのは、本当に相談の数も多く、どれも深刻なものばかりです。でも、今の制度の中では、簡単に解決できないものばかりで、施設と交渉してなんとかお願いするということぐらいしかできず、いつも歯がゆい思いをしています。
コメント
受刑者も年に1回、各施設で健康診断を受診していて、それは、刑事被収容者処遇法第61条で規定されているのですね。法律上は、受刑者の人権を考慮している、という訳ですね、建前としては。
でも、現実には結核の集団感染が起こったり、様々な問題があるというのは、とても悲しく思います。
時折、「受刑囚が、病で亡くなった」という報道がありますが、今までは、そのことについてあまり深く考えませんでした。でも、受刑者の人権が軽んじられていると思える今、獄中死について「十分と言える医療を受けられたのだろうか?」と考えてしまいます。「医療の問題というのは、本当に相談の数も多く、どれも深刻なものばかりです。
でも、今の制度の中では、簡単に解決できないものばかりで、施設と交渉してなんとかお願いするということぐらいしかできず、いつも歯がゆい思いをしています」という先生のお気持ち、解かるような気がします。
ただでさえ、制度を変えることは容易なことではない上、ある意味、「日の当たらない場所」にいる受刑者の人権擁護にまで手が回らない、というのが実情なのでしょうか。弱い立場の人にこそ手厚い福祉を、という考えが通用しない社会はとても哀しい社会だと思います。何とか改善してほしいと切に願います。
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。