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秋山映美の「監獄から社会へ」

トイレに行くにも許可が必要

 9月30日の読売新聞に、刑務作業中の受刑者がトイレに行くことを許されず失禁してしまい苦痛を受けたということを訴えた裁判で、受刑者側が勝訴したという記事がありました。

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 刑務作業中は、基本的に作業以外のことをする場合はすべて刑務官の許可が必要になります。たとえば、作業に使用している道具を机から落としてしまった場合にも、刑務官に許可をとってから拾います。
 また受刑者は、刑務作業中にほかの受刑者と言葉を交わすことが禁じられているのですが、朝、刑務作業を行う工場に行ったときに、つい「おはよう」とあいさつをしてしまい、そのことがきっかけで懲罰になってしまったという相談もありました。
 もちろん、トイレに行くときも、刑務官の許可が必要です。

 監獄人権センターにも、「刑務官に嫌がらせをされて、トイレに行きたいと申し出てもなかなかトイレに行かせてもらえない」という相談は何件かありました。中には、今回のケースと同様に「トイレに行かせてもらうことができず失禁してしまった。こんなひどい工場で作業することは苦痛であり、これ以上作業が続けられない」という内容の手紙もありました。
 たしかに、50~70人もの受刑者が作業をしている工場を2人ほどの刑務官がみているので、施設側は厳しい規則で受刑者を管理したいのかもしれませんが、さすがにトイレに行かせないというのは受刑者に大変な苦痛を強いることになります。ましてやその場で失禁させてしまうなどというのは重大な人権侵害です。

 このようにひどい人権侵害を受けても、受刑者ができることは法務省内部の制度である「苦情の申出」しかありませんでした。トイレに行かせないということについては、受刑者は内部審査で却下された場合に、再審査の申請をして第三者が判断する不服申立制度を利用するということができないのです。
※不服申立制度については、2009年5月29日のブログをご覧ください。

 今回のケース、地裁で勝訴となりましたが、裁判にはお金も時間も忍耐力も必要となる上に、勝訴することはまれです。なかなかすべてのケースを裁判で争うことはできません。
 このような人権侵害について、裁判を起こさなくても解決するような不服申立制度が必要だと思います。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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