厚生労働省元局長の判決
このブログを書いている今はまだ判決が出ていないので、どうなるのかわかりませんが、9月10日の大阪地裁で厚生労働省の元局長の判決が出ることになっていて、各新聞社は無罪判決が出る可能性が高いと報じています。
この事件、覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、実態のない「障害者団体」が郵便の割引制度を不正に利用したことに関連して、元局長が逮捕・起訴された事件です。
直接的な証拠はなく、ご本人は一貫して無実を主張しているのですが、捜査段階で部下や関係者が「元局長からの指示で手続きをした」と言ったという供述証拠がありました。関係者は、捜査官が作ったストーリーの供述証拠に署名していたのです。
私は、大学院で警察留置場、いわゆる「代用監獄」における取調べの問題などについて研究していて、冤罪事件の被害者の話を聞いたり、判決を読んだりしていたので、この事件や少し前に再審で無罪となった足利事件についても注目していました。
普通に考えたら、「なぜ、こんなウソの書面に署名をしてしまうのか?」と疑問に思いますが、人間は、本当に追い詰められると身に覚えのないこともまるで自分がやったかのように自白をしてしまうのです。
何日もの間身柄を拘束され、時には弁護士以外の人との面会を禁止された状況で、「お前がやったんだろう」とか、「やっていないと言い続けているともっと罪が重くなるぞ」とか言われ続けると、その辛い状況から逃れたくて、やってもいないのに「やりました」といってしまうこともあります。それが暴行などを伴うような場面でなくても、一人きりにされ、誰とも会えず、毎日毎日言われ続けると「やりました」と自白をしてしまったり、本当に自分がやった気になってしまうことすらあるそうです。
このような自白の心理については、心理学者の浜田寿美男さんが、たくさんあるご著書の中で解説されています。
この事件は、裁判が進むにあたって関係者の供述証拠がウソであったことがわかってきました。
元局長は5ヶ月もの長期間勾留されていたそうですが、ご本人の心が強くて、またそれを支える家族や友人、知人などがいたからこそ、無罪になるのではないかといわれるまで事件が解明されたのではないかと思います。
このような間違いが起こらないためにも、取調べの様子の一部始終を複数のカメラで記録したり、身柄を拘束した状態での取調べを制限したりする必要があるのではないかと思います。
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