住民登録について
全国で高齢の方の所在がわからなくなっているということが連日ニュースになっています。
ニュースを見ている限りだと、大半のケースは事件性がないものであるような気がします。
たとえば家族が突然出て行ってしまい行方不明になってしまった場合に、残された家族は行方不明の方の帰りを待って、住民登録を残し続けるということは十分にありうる話だと思います。
ところで、受刑者の住民登録はどのようになっているのかというと、刑務所への入所時に家族がいて、その後も手紙や面会などのやりとりがある場合は、家族がそのまま住民登録を残してくれていることが多いようです。しかし、刑務所に行くときにはすでに家族とも疎遠になってしまっていたり、刑務所にいる間に離婚してしまったりした場合は、住民登録が抹消されてしまうこともよくあります。
住民登録は、市役所などからの郵便物が本人に届かなかった場合など、その方がそこに居住していないということが確認されると、職権によって抹消されてしまうのです。
ただし、刑務所の中にいても、刑務所の住所で住民登録をすることもできます。現在、どのくらいの受刑者が住民登録をしているのかは不明ですが、昨年の春に、「定額給付金」の受給のために刑務所の住所で登録した受刑者もいるのではないかと思います。また、出所後の帰住先が決まっている場合には、そこでまた住民登録をする方もいるでしょう。
一度住民登録が抹消されてしまうと、出所後の生活に非常に困難をきたします。生活保護を受け取る場合には一般的に「住所」が求められるからです。
最近では、野宿者支援の団体などの働きかけもあり、市役所などの窓口でも柔軟に対応してくれるところもあるようですが、出所した受刑者が生活保護を受け取るには、ハードルが高く、まだまだ弁護士や支援者のサポートが必要です。
今、私たちの社会では高齢の方が所在不明になっていることが大変話題になっていますが、刑務所の中には、住民登録もしていなくて、この社会に存在しないことになっている人もたくさんいるのではないかと思います。
私自身は、自分の住民票が抹消されるということは想像していなかったため、あまり深くこの制度のことについて考えたことはありませんでしたが、今回のニュースを見ながら、あらためて住民登録の制度について考えました。
受刑者に対しても、せめて出所前に、住民登録やその他の社会福祉の制度について、具体的な知識・やり方をしっかりとお知らせする必要があるのではないかと思いました。
コメント
「住民登録は、市役所などからの郵便物が本人に届かなかった場合など、その方がそこに居住していないということが確認されると、職権によって抹消されてしまう」ということは、全く知りませんでした。
私は、何回か引っ越しで、住民票を移したことがありますが、何回目かの引っ越し先で、何のためかは忘れましたが、「今までの住民票の動きを全部はっきりさせる」必要があり、「除票」をとるなど、とても面倒だった記憶があります。
抹消されていた「住民登録」を復活させるのは、もっとずっとたいへんだろうと思います。
また、住民登録を刑務所の住所にする、ということは、出所してからも、刑務所の住所で登録した事実が残る訳ですから、心ない人から差別を受けたり、就業の妨げになることも十分考えられます。
仮出所の場合は、保護司さんがいらっしゃるので、まだ、いいと思うのですが、満期で出所した場合、文字通り「放り出される」ことになるので、援助者のいない方は、社会保障の受け皿からこぼれ落ちてしまうと思います。
「社会的弱者に手を差し伸べる」のが社会保障だと思うので、再犯を防ぐためにも、満期出所者への何らかの救済制度が必要だと思います。
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