障がいをもった人が生きやすい社会
6月19日の朝日新聞朝刊に、「東京都心で暮らすホームレスの3割に知的障害、4割に精神疾患があるとされる」とありました。
記事によると、そういった人たちは障がいを周囲の人に理解してもらえず、人間関係をうまく築くことができないために職を失い、路上生活をおくるようになったのではないかとのことでした。
この記事に示されているホームレスと同様に、障がいを理解してもらえずに、トラブルになって刑務所に入所してくる人もたくさんいるのだろうと思います。
2003年に山本譲司さんが『獄窓記』という本を出版してから、刑務所内にも知的障がいを持った人がかなりいるということが、一般にも知られてきました。2008年の矯正統計年報によると、新規受刑者のうち、知的障がいを持った人(疑いを含む)が20%以上いるとのことです。しかも、これらの人たちみんなが療育手帳を持っているわけではありません。
精神疾患に関しては、こちらもなかなか統計を出すのは難しいと思いますが、障害者手帳を持っている人以外にも、かなり多く精神疾患を患っている人がいるのではないかと考えられます。
その中には、刑務所に入所する前から精神疾患を患っている人もいれば、刑務所に入った後、拘禁性の精神疾患にかかってしまった人もいると思います。
私たちは、受刑者と直接会って話ができるわけではないので、いただいた手紙の文面から察することしかできませんが、監獄人権センター宛に届く手紙に目を通していると、かなり多くの人が精神疾患や知的障がいを抱えているのではないかと思われます。
今まで受け取った手紙を振り返ってみると、少年刑務所からの手紙に多いのですが、文章がほとんどひらがなで書かれているというものも少なくありませんでした。
また、長期の刑務所や再犯者の多い刑務所に収容されている受刑者の中には、文章の主語と述語の関係がはっきりせず、相談の内容もなかなか理解できない手紙もありました。このような手紙については、「あなたの相談は、これこれこういうことでしょうか?それでしたら、このようにしてみてください。」と、相談内容をこちらでまとめながら回答を作成しています。
このように、自分の主張をうまくまとめることができない人たちは、刑務官ともうまくコミュニケーションがとれずに、いらぬことで懲罰を受けることになってしまうこともあります。
刑務所の人員配置がもう少しゆとりをもってなされていれば、このようなトラブルは避けられるのではないかとも思いますが、刑務官の数が非常に少ない現状では、刑務官も一人ひとりの受刑者にゆっくりと対応することはできないのでしょう。
私も手紙を読んでいて、「この人と仲良くなるのはなかなか難しいだろうな」と感じる人もいます。しかし、1対1でその人と関わるのではなく、何人もの人で関わることによって、こちらの接し方にももっと余裕がでてくるのかなと思っています。
そして、このような手紙を読むにつけ、刑務所内の処遇を改善するだけでなく、障がいを抱えている人が刑務所に収容されるケースが少なくなるようにしなければならないと感じます。それには、私たちの意識を変え、そして、社会を変えていく必要があるのではないかと思っています。
コメント
私も、「東京都心で暮らすホームレスの3割に知的障害、4割に精神疾患があるとされる」との記事を読み、「そうなんだろうなぁ」と思いました。
今まで、統計的に調査されていませんでしたので、はっきりと数字には出ませんでしたが、いわゆる「社会的弱者」が社会福祉を受けることなく、雇用から押し出される格好で、「どうしようもなく」ホームレスとなってしまう。なかには、冬の寒さに耐えかね、犯罪を犯して刑務所に入っていく人もいることでしょう。
でも、出所しても行く当てもない。仕事に就いても障害を理解されないために、解雇されてしまうこともあるかもしれない。
私達の社会が、もう少し、「人に優しい」社会であれば、「差別と偏見のない」社会であれば、
また、福祉政策の対象の幅がもっと広ければ、彼らは、社会の中で、尊厳を持って暮らしていける人々なのではないのでしょうか。
やはり福祉は福祉、法務省は法務省と独立しているのがいけないのだと思います。福祉の地域資源が出所した知的や精神の障害者とつながって、年金を取ったり手帳を取ったりして、犯罪を犯さなくても暮らしていけるように、橋渡しをする仕組みが決定的に欠けているのだと思います。外国でもやはり刑務所が障害者の最終受け入れをしているのでしょうか?
山本譲司著「累犯障害者」を以前ブログに書きました。
http://www.caresapo.jp/fukushi/blog/sano/2008/12/
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