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秋山映美の「監獄から社会へ」

シリアの花嫁

 先日、ニューヨークに行く飛行機の中で、「シリアの花嫁」という映画を見ました。
 話の大筋には刑務所に関することはあまりでてきませんが、いろいろと考えさせられる映画でした。刑務所については、主人公の父親が、政治犯で刑務所に行き、現在は出所して保護観察中、ということが冒頭で語られていますが、父親は、集会に行ったとか、そのような発言をしたとかで服役したのでしょうか。詳しくは語られていませんでした。
 2004年公開の映画なので、観たことがある方もいらっしゃると思います。

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 イスラエル占領下のゴラン高原で、主人公の女性がシリアの親戚と結婚するというお話ですが、シリアとイスラエルは対立しているため、一度ゴラン高原を出て国境を越えシリアに入ってしまうと、それまで暮らしていた場所には二度と戻ることができないというのです。
 ゴラン高原に住んでいる人たちには国籍がありません。
 一度シリアに入国するとシリア国籍が確定するため、その後はゴラン高原に戻ることができなくなるのだそうです。

 今まで、ゴラン高原のことについては、ニュースで見たり聞いたりしていましたが、紛争地帯で「国境を越える」ということは、すごく重大な決意がいることなんだということをあらためて感じました。

 映画の途中で、主人公の女性の家族がシリアに住んでいる親戚と国境の金網越しに話をする場面があるのですが、手の届く距離の会話ではなく、双眼鏡と拡声器を使って「元気だったか」などと声をかけ会話をしていました。

 主人公の女性がシリア側に行くためには、境界線でイスラエルの係官に通行証を発行してもらい、その通行証を国際赤十字の駐在員がシリア側に持っていき許可を得てシリア側に入る必要があります。
 しかし、ゴラン高原を自国の領有と主張するイスラエルは、通行証にイスラエルの出国印を押してしまいます。その通行証を見たシリアの担当官は入国を拒否して、赤十字駐在員がイスラエルとシリアの国境線を行ったりきたりしてなんとか解決しようと奮闘していました。

 ここまで国と国との対立になってしまうと、もはや政府は住んでいる人のことなどあまり考えなくなり、自国に有利なようにということばかりを考えるようになってしまうのでしょう。

 話はだいぶ異なりますが、今、普天間基地の移設の問題で、辺野古か?県外か?はたまた国外か?と日本政府とアメリカ政府はいろいろ交渉しているようですが、日本政府もアメリカ政府も、現在の基地や移転先といわれている場所に住んでいる人たちをどのように考えているのでしょうか?
 もちろん、すべての人が満足と感じる国を作ることは難しいことでしょうが、この問題で、国というのは、政府というのは、私たち市民の人権や福祉をどこまで考えてくれているのだろうかとあらためて疑問を感じました。
 もっとも、政府は私たち市民が選んだ代表者なので、政府がおかしな政策を実行したとしても、私たちの責任でもあるのでしょうが・・・。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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