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秋山映美の「監獄から社会へ」

中国の死刑執行について

 6日に、中国で麻薬密輸の罪で死刑を宣告されていた日本人の死刑が執行されました。
 また、これとは別に、麻薬密輸の罪で死刑執行を通告されている日本人が3人います。

 今回の執行は、犯罪と刑罰のバランスというものを考えさせられました。
 ハムラビ法典にある「目には目を、歯には歯を」という言葉が、「目をやられたら、目をやり返せ」という意味であるように理解されていますが、本当は違う意味だということをご存知でしょうか?
 この言葉は、「目を取られたら、目を取る以上のことはしてはいけませんよ。鼻や口まで取ってはいけませんよ」という刑罰の最高限度を示しているのです。
 そもそも、いろいろなプログラムや処遇方法が開発されている現代では、腕を折られたからといって、「腕折りの刑」なんていう判決がでることはありません。
 罪を犯した人は、刑務所という場で更生のためのプログラムを受け、社会へ戻ってゆくのです。

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 確かに、薬物のマーケットは年々広がっていて、なんとか密輸を阻止する必要があります。しかし、死刑という刑罰がその抑止力になるのかというと疑問です。
 アメリカには死刑制度がありますが、どんなに執行しても犯罪はまったく減る様子がありません。刑務所人口も200万人、実に100人に1人が受刑者です。
 ヨーロッパは、EUに加盟するための条件が死刑を廃止することですので、ほとんどの国で死刑制度は廃止されています。しかし、それによって重大犯罪が増加の一途をたどっているという話は聞いたことがありません。

 中国の麻薬密輸と死刑というのは国際社会の常識からしても明らかに犯罪と刑罰のバランスを欠いています。
 しかし、こんな中国ですが、日本よりもましな点があります。
 今回、中国側は死刑執行の数日前に日本に告知をし、執行前に家族との面会を認めました。これは、日本での死刑執行と異なる点です。
 日本の死刑は、執行の日の朝、執行の数時間前に本人に知らされるだけで、家族には執行後にならないと知らされません。
 死刑囚は、家族とお別れする時間が一切持てないばかりか、無実を争っていても弁護士に知らせることもできずに、執行されてしまうことさえあります。
 この点は、国際社会から強く非難されています。

 中国の刑事法に関しては、裁判制度は透明性が確保されておらず、問題点もたくさんありますが、日本よりもましな部分もあり、意外でした。
 ちなみに、数年前の夏休みに上海の刑務所を見学に行ったのですが、終身刑や死刑の受刑者たちが、歌を歌ったり、踊りを踊ったりして私たち訪問客に見せてくれました。これも驚きでした。

 今回の死刑告知を受けて、現在アムネスティ日本は今回の執行および、現在通告されている日本人死刑囚に関して声明を出し、中国大使館前で抗議行動も行っています。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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