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秋山映美の「監獄から社会へ」

宮崎刑務所で虐待

 23日の朝日新聞に、宮崎刑務所で保護室に入れられた受刑者が虐待された疑いがあるということが報じられていました。

 保護室は、錯乱状態になってしまった受刑者を落ち着かせるために利用されたりしていますが、時には、刑務官に対して激しく抗議をしている受刑者を懲らしめるために使われているのではないかと思われるケースもあります。

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 記事によると、宮崎刑務所の刑務官5人が、2008年7月に、受刑者を保護室に入れ、真夏にもかかわらず、暖房を入れて室温を38℃にまで上昇させ、虐待をしたとのことです。
 受刑者を保護室に収容したり懲罰を受けさせたりするときには、受刑者やその他の様子を専用の記録表に記載する必要があります。そのため、当然、この受刑者の収容の記録も取られていたのですが、虐待を隠蔽するために、室温の数字の38℃を塗りつぶして28℃に改ざんしたとのことです。
 この5人の刑務官は、公務員特別暴行陵虐と虚偽公文書作成の疑いで書類送検されました。福岡矯正管区は、刑務官のうちの1人を懲戒免職にするなどの処分をしています。

 保護室というのは密閉された空間であって、錯乱状態にある受刑者などがよく収容されるため、今まで、何度も事故や事件が起こっているのです。
 たとえば、収容する際に、受刑者が暴れていると、体重が100キロくらいあり柔道などが得意な保安担当の刑務官が、数人がかりで体を押さえつけるので、その際に受刑者が怪我をしたという相談も寄せられます。似たような相談は少なくありません。
 また、便などで汚れた体を洗い流すという理由で、真冬にもかかわらず水を浴びせられたという相談も時々ありました。
 1996年には、島根県の浜田拘置支所で保護室に収容された男性が熱射病で死亡するという事件もありました。

 本来、保護室などに収容する際は、医師があらかじめ収容者が保護室収容に耐えうる状態であるかを診察することになっていますが、そのようなチェック体制が適切に機能していないために、事故や事件が起こってしまうのではないかと思います。

 宮崎刑務所の件ですが、記事によると、5人の刑務官のうち1人は今年3月に自殺したとのことです。
 宮崎刑務所からはほとんど監獄人権センターに手紙が届いていないので、刑務所内がどのような雰囲気なのか情報は少ないのですが、刑務官が自殺をするというのはただ事ではないと思います。
 刑務官も刑務所に併設された官舎に住んでいる人が多いので、閉鎖された空間で大半を過ごすことになり、かなりストレスがたまっているのではないかと思います。そうなると、一番弱い立場の受刑者にストレスのはけ口が向かってしまうのではないでしょうか。

 宮崎刑務所には、この事件の解明だけでなく、他にも何か問題がないか、しっかりと調査をしてもらい、二度とこのような事故が起こらないようにしてほしいと願っています。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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