仮釈放と満期出所
2月21日の朝日新聞朝刊に、仮釈放と満期出所の再犯率に関する記事がありました。
その記事でも指摘されていた通り、仮釈放で出所した人よりも満期出所した人の方が再犯率は高いのが事実です。
それにはいくつかの理由が考えられます。
まず、仮釈放の期間に保護観察官の指導を受ける機会や保護司との面会があるということは、再犯率の低下に貢献していると考えられています。もっとも、仮釈放で出所できる人は、刑務所の中での行いも良く、反省していて、改善更生の意欲もある人が多いということも、再犯率の低さに関係があると思います。
また、一般的に、身元引受人がいる場合には再犯率が低いといわれます。仮釈放の決定にも身元引受人の存在が大きな影響を与えます。
こういったことを考えると、改善更生の意欲があって、かつ身元引受人がいる仮釈放の人のほうが、満期出所者よりも再犯率が低くなるのは当然のことだと思います。
満期出所者にも保護観察をつけたらどうかという議論もありますが、仮釈放になる人と満期出所の人の性格・意欲・環境の違いを考えると、出所後に保護観察をつけただけでは効果はあまり期待できないように感じます。
刑務所の中でも、薬物離脱のプログラムや、職業訓練、篤志面接員(宗教家や法律家など)との面会など外部の社会と触れ合う機会は、行いの良い人に与えられる傾向があると聞きます。
でも、もしかしたら、外部の社会と触れ合う機会は、処遇が困難な受刑者にこそ必要なのではないかと思います。
満期で出所した人に対して保護観察のような強制処分を実施することは、裁判で決められた刑期を事後的に延ばすことになるので、現実的ではありませんが、刑務所にいるうちから出所後の生活再建に向けた環境作りをはじめ、出所後は、強制処分ではない、福祉的な観点からの支援、時には医学的な観点からの支援をする仕組みが必要なのではないかと思います。
現在、社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者が刑事施設に配置され、刑務所内にいるうちから、特に高齢の受刑者、障がいを持つ受刑者に対して、出所後の環境を整えるということが行われ始めています。しかし、その多くは一人職場であり、非常勤というところも少なくありません。
一人の受刑者に対する十分な出所後の環境調整は、非常勤のワーカーさんの力だけではとてもなしえず、保護観察官や保護司、ハローワーク、自治体の福祉課、住宅供給の窓口、弁護士、医師などで構成される社会復帰委員会のようなものを設置して、チームで支援することが必要ではないでしょうか。
仮釈放者も満期出所者も、刑務所を出所すると、その委員会で身の振り方を考えることができると良いのではないかなと思います。
コメント
掲載を見聞しました。
確かに、身元引受人と保護司の設置については、大いに再犯率を下げるという傾向はあるようです。
ただ近年、初犯対象の社会復帰促進センター等に入所している母親と接見する機会があり、入所している子どもと面会した時に、犯罪をした子どもの今の心情を遠まわしに親へ伝えている話してを聞くことが出来たので報告をします。
それによれば、受刑者同士で刑期のことを頻繁に話すのか、子どもが知るはずもない[模範囚になれた場合の仮釈放の時期や、模範囚になる秘訣]を打診していたというのである。最近あったことをペラペラ話す子どもが、場所が刑務所だけに気を使っているのか言葉を選んで話すようになったのが一番の変化だという。しかも、言葉の節々に軽犯罪も知能犯が増えていること。
そして、罪に服する考えよりも[捜査機関に逮捕されたことについて、ミスった]という反省と、どうように模範囚として取り繕うかを懸念しながら仮釈放の時期を想定し作業をしているという。驚きの発言である。
しかし、その一方では小声で話しては詫びることもしない子どもが、[もう、こんなことはしない]と誰かに(例えば、看守)聞かせるかのように、それだけは声を掲げて強調しながら話していたという。それ以外は、全て小声であったらしい。
すなわち、刑に服して模範囚となるのではなく、[次は逮捕されないように何か策を練る]ということを念頭に、逮捕されない試案を試すかのように早く出所したい考えが脳裏の一部にあるようである。それら欲望を満たすために、模範囚を装っている事実があると思える。
犯罪者の心情が、そのように変化している点については、遺憾に思えてならない。また、そのような考えを持った犯罪者がいることも忘れてはならない。
本当の模範囚なのか否かを、どう判断するのか、又は判断しないまま仮釈放をし保護司に全てを委ねるのか、法務省矯正局・保護局の今後の見解や措置方法は気に掛けなければならない。不安は募る一方である。
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