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秋山映美の「監獄から社会へ」

無期懲役について

 無期刑は、期間の定められていない自由刑(受刑者の自由を奪う刑罰)です。
 法務省は、2008年8月から「無期刑受刑者の仮釈放に係る勉強会」を設置し、さまざまな報告書を公表してきました。
 この勉強会において法務省が公表した資料によると、2008年12月31日時点での無期刑受刑者は約1700人いることがわかります。

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 「無期懲役」は「10年たつと仮釈放で出所できる」とよくいわれますが、それは、刑法28条の条文があるからではないかと思います。
 刑法28条では、仮釈放について「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる」と定められています。
 しかし、この条文の意味は、あくまで「10年を経過すると仮釈放の可能性がある」というだけであって、実際は、2003年からのデータによると、無期懲役受刑者で仮釈放になった人のうち、執行済刑期(服役した期間)が20年以下で出所した受刑者はいないのです(「平成21年度犯罪白書」)。
 また、これには、一見そうではないように見えるデータがあるので言っておきます。
 保護統計年報を見ると、執行済刑期が20年以下で仮釈放となっている受刑者もいます。しかしそれは、一度仮釈放で仮出所した後に仮釈放が取り消されてまた刑務所に戻り、その後さらに数年服役してから再度仮釈放になった受刑者なのです。

 この10年、仮釈放になった無期刑受刑者の平均在所期間は20年を超えており、さらに、仮釈放で出所した人数よりも、刑務所の中で死亡する無期刑受刑者の方が多くなっています。

 無期刑は刑罰として甘いので「終身刑」を導入しようという意見もありますが、このような無期刑の仮釈放の運用状況を見ると、無期刑はいわゆる「終身刑」と日本でいわれている刑罰と変わりないのではないかと思ってしまいます。
 また、日本の無期刑では、仮釈放によって出所した受刑者は、刑期が満了する日まで保護観察に付されます。その場合、守らなくてはならない「遵守事項」が定められ、旅行に行くことを制限されるなどさまざまな制約が課されます。無期刑の人は、仮釈放で出所しても「恩赦」で減刑されない限り、一生この保護観察が続くので、運用実態だけではなく制度上も「終身刑」と同じものといえるのではないかと思います。
 このような無期刑の仮釈放の運用状況は、果たして受刑者にとって、そして社会にとってよいことなのでしょうか?


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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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