刑務所の中で病気になったら
監獄人権センターに届く相談の中でもっとも多い相談は医療に関するものです。
夜眠れないと訴えても薬を出してもらえない、C型肝炎感染のおそれがあるけれども専門医の診察をうけることができない、刑務所の医師による手術がうまくいかずに後遺症に苦しんでいる、など相談の内容はさまざまです。
刑務所の外にいる私たちからすると、気のせいではないかと思われるようなちょっとした症状でも、自分で情報を収集できない刑務所の中では不安が募ってしまい、精神的に不安定になり、それによってさらに症状が悪化してしまうことがよくあります。
なぜこのようなことになってしまうのかというと、刑務所が常勤の医師を十分に確保することができないため、診察のために外部の病院に受刑者を連れ出すための人員の確保ができないためといった理由からです。
11月6日の朝日新聞夕刊にもありましたが、数年前より刑務所の医師が不足していて、全国188の刑事施設のうち、常勤の医師がいる施設は90施設で、そのほかの施設では週に1~2回ほど勤務する医師を確保するのでやっとだそうです。
刑務所の中には、精神や身体に疾患がある受刑者を収容する施設として厚生労働省の病院指定を受けている医療刑務所が全国に4カ所あります。そのほか、府中刑務所や名古屋刑務所など、いくつかの大きな刑務所はほかの通常の刑務所と比べると医師や医療器具が充実した施設となっています。
病気の受刑者はこのような施設に収容されることになります。このような専門的な治療が受けられる刑務所もあるのに、なぜ監獄人権センターには医療に関する相談が多いの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。これには、医療刑務所はいつも定員いっぱいで、病状が深刻な受刑者でもなかなか移送することができないという問題があるのです。
精神的に不安定になっている受刑者からの相談に対しては、根本的な解決になるような回答はなかなかできないのですが、手紙に丁寧に返事を書き、励ましたりすることで症状が安定することもあります。
深刻な病状の相談が寄せられたときには、まず、受刑者との数度の手紙のやり取りを通して、事実の確認をさせてもらいます。たとえば、何月何日に倒れて意識を失ったという病気に関連する事項や、診察を受けたのはいつか、病状について担当の医師からどのような説明を受けたか、どのような薬を処方されたかなどの事実関係まとめます。
刑務所の外にいる家族の協力が得られる場合には、面会した時の様子をなるべく細かくメモしてもらい、さらに可能であれば刑務所に入る前に通院していた病院に意見書を作成してもらいます。そして、家族や本人から専門医の診察を受けられるように粘り強く刑務所と交渉をしてもらうようにアドバイスをします。
刑務所に入る前からの持病や刑務所に入所してからの症状で明らかに専門的な治療が必要と思われる場合は、専門医の診察が受けられるように監獄人権センターから刑務所に申し入れを行うこともあります。
このように刑務所に働きかけたりしても、医師不足、職員不足など、刑務所だけの力では解決できない問題もあり、監獄人権センターもなかなかこれという解決方法を示すことができずに、いつもはがゆく感じています。
コメント
こんにちは。刑務所のお医者さんの本をこないだ読みました。面白く書いてありました。一方で刑務所のお医者さんのことを描いた漫画も見たことがあります。こっちは凄惨な現場でした。どっちが本当なんだろう、と思ってしまいました。
良いお医者さんがつとめられるようなところになってほしいな。
ところでクスリやってた人なんかも、刑務所のお医者さんは診てくれるんでしょうか? 禁断症状とかも。
精神科医がいる施設では、薬物使用の後遺症がある受刑者や、精神的に不安定な受刑者も診察をしてもらっているようです。
しかし、薬物依存症の専門的な治療を行っている施設はほとんどないのではないかと思います。
私の義兄が今刑務所内でc型肝炎なのですが、
義兄を失いたくありません。
何かよい方法は無いのでしょうか?
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