ついに出版!被害者法令ハンドブック
中央法規出版から『被害者法令ハンドブック』が出版されました。
「被害者」に関わる各種法令を横断的に収載し、被害者に関わる法令の全体像を展望できるよう編集した法令ハンドブックです。私も編集委員としてこのハンドブックの編集に携わりました。
皆さんが「被害者」という言葉から一番初めに頭に思い浮かべるのはおそらく「犯罪被害者」だと思います。また、最近では、欠陥住宅などを購入してしまった「消費者被害の被害者」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
そういった意味では、受刑者の人権を守る立場にいる監獄人権センターのスタッフが「なぜ『被害者法令ハンドブック』にかかわるの?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
その点についてお話ししたいと思います。
このハンドブックでは、「被害者」を「犯罪被害者」に限定していません。このハンドブックの「被害」には、「国家権力による被害」も含まれているのです。
逮捕され尋問を受けている人や、受刑者、入管施設の収容者など、国家によって自由を奪われた人は、彼らを監督する公務員から暴行や虐待、時には拷問を受けることがあります。
国家によって自由を奪われた人々については、ヨーロッパでは中世から必要以上の刑罰や拷問を禁止することが議論されてきました。
1970年代、中南米の軍事独裁国家は、自分たちの意に反する人々を拷問し、大規模な殺害を行っていました。このころから国連では、拷問の禁止や、国家権力の濫用による被害を防止するための議論が行われるようになり、国際基準や条約が次々と成立しました。
日本では、受刑者などの処遇については、2006(平成18)年まで、1908(明治41)年に制定された「監獄法」によって運用されていましたが、「刑事被収容者処遇法」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律)が成立し、この法律の中に、被収容者の人権尊重が明記されたことによって、施設の中での被害を防止するために刑事施設視察委員会が設置され、被害を訴える不服申立制度が整備されました。
私たち監獄人権センターのスタッフは、刑務官からひどい暴行や虐待を受けたという受刑者等からの相談に対してアドバイスや支援を行っています。こういった観点から、私も編集に携わったのです。
編集作業にあたって、編集委員はそれぞれ自分の専門分野の法律や規則などをピックアップしたのですが、このハンドブックで扱う分野が、犯罪者被害、消費者被害、権力濫用の被害と多岐にわたり、収載内容も憲法、民法、刑法、さらには規則や通達、国連の宣言や基準とたくさんあって、ハンドブックにまとめあげるのに大変苦労しました。
どの分野においても充分な内容を盛り込みつつ収載する項目を絞るというのは至難の業です。
このようなハンドブックはあまり自分とは関係ない、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、身近な消費者被害についても、関係法令、相談窓口などの情報が充実していますので、書店で見かけたら、ぜひ手にとってみてください。
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