「休暇」を観て
少し前になりますが、「休暇」という映画を観ました。この映画の原作は、吉村昭さんの短編小説集『蛍』(中央文庫)に収録されています。
主人公の刑務官が、シングルマザーの女性と結婚をすることになったため、死刑執行の際に落下する死刑囚の体を支える「支え役」を志願し、1週間の特別休暇をもらって新婚旅行に行くというお話です。
親の死と自分の結婚、拘置所で死を待つ死刑囚と無邪気に遊ぶ子どもの姿、死刑執行と新婚生活…
話は淡々と進んでいくのですが、執行前の拘置所の様子と主人公の新婚旅行、新しい生活の場面とが時系列を行ったり来たりしながら交互に映し出されることによって、生と死の対比が鮮明に描かれていました。
死刑囚の生い立ちや事件の詳細にはほとんど触れられておらず、穏やかに絵を描いて拘置所の中で毎日を過ごす死刑囚の姿が描かれていました。
一見すると、自分がいずれ死刑執行されることを受け入れたかのように見える死刑囚ですが、若い刑務官のちょっとした親切で突然暴れだしたり、いざ死刑執行という場面で怯える姿が非常に印象的でした。
この映画にアドバイザーとして参加した元刑務官が、パンフレットで死刑執行業務にあたる刑務官の心情について解説をしています。
それによると、刑務官は執行業務の命令に背くことができずにストレスを抱えており、また、毎日のかかわり合いの中で死刑囚が償いの気持ちを持ち生まれ変わったように思えても死刑を執行しなくてはならないというつらさを抱えているというのです。
刑務官が死刑を執行するときの心情についではそれほど話題になることはありませんが、現役の刑務官が外の社会に死刑執行のこと告白することは容易ではなく、その心には計り知れないほど大きな負担がかかっているのだろうと思いました。
仕事とはいえ、死刑執行の役割を与えられたとき、自分にはできるのだろうか?
死刑判決が確定し、死刑が執行されるということは、だれかがその刑を執行する職務を担うわけで、これを他人事にしてしまっていいのだろうか?…いろいろなことを考えさせられた映画でした。
DVDが発売されているようですので、気になった方はぜひご覧ください。
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