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秋山映美の「監獄から社会へ」

「アメリカの取り組み~ドラッグ・コートの紹介」

 1980年代から薬物使用と薬物の影響を受けた犯罪が急増し始めたアメリカでは、刑務所は薬物事犯者であふれかえってしまい、刑務所に収容する人を減らすことと、薬物を自己使用した人の再犯を防止することを目的として、ドラッグ・コートという裁判制度が創設されました。
 ドラッグ・コートは、1989年フロリダ州マイアミのデイド郡裁判所が、薬物を自己使用した人に対して、裁判の過程で薬物依存症者にプログラムを受講させ、地域社会と協力して回復させるために創設した制度で、今では全米の各地で実施されています。

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 ドラッグ・コートの手続きは通常の刑事裁判とは異なっており、裁判官が被告人と対話をしながら薬物依存症者の回復プログラムへの参加を促して、プログラムの参加者を叱咤激励しながら薬物依存からの回復を支援しています。裁判官、検察官、弁護人がチームになって取り組むのが特長です。
 原則初犯者にドラッグ・コートへの参加資格がありますが、マイアミのデイド裁判所では前科2犯の人も参加できるそうです。薬物を販売した人や過去に性犯罪、暴力犯罪の前科がある者は参加資格はありません。
 たとえば、薬物の自己使用をした被疑者にドラッグ・コートへの参加資格があり、参加を同意した場合、起訴前の段階で被疑者がドラッグ・コートのプログラムに参加して修了すれば不起訴となります。また、起訴後に裁判官の監督のもとプログラムを終了すれば公訴棄却となります。

 ドラッグ・コートへの参加を選択した人は、自治体や非営利民間団体が提供する回復プログラムに1年ほど参加することになります。
 回復プログラム中、参加者は定期的に尿検査などの薬物検査を受け、裁判所へ出廷するのですが、その間に薬物を再使用してしまった場合でも、すぐに有罪になることはなく、まずは裁判官の前に出廷させられその理由を問われます。
 プログラムに参加するのをやめてしまった場合でも、数日刑務所に収容され後に、再度回復プログラムに参加させられたり、入寮して行うプログラムに変更させられたりします。
 ドラッグ・コートの目的は、薬物使用者を薬物依存症から回復させることであるため、すぐに刑務所に収容するのではなく、できるだけ回復プログラムを受講させようと、さまざまな努力がなされています。
 ドラッグ・コートに参加すれば有罪にならないというのも、参加者が回復プログラムに参加する動機付けとなっているのです。

 日本とは制度が異なるので、そのまま導入することは難しいかもしれませんが、薬物の自己使用の繰り返しを防止するために、このような取り組みは参考になるかもしれません。

 ドラッグ・コートについては、書籍や私が以前書いた論文もありますので、参考にしてください。
★「薬物事犯者の再犯防止に関する有効な対策」(2006年)
http://www.jcps.or.jp/body/042_happyo2006.html
★石塚伸一著『日本版ドラッグ・コート  処罰から治療へ』(日本評論者、2007年)
★James L.Nolan,Jr 著、小沼 杏坪 監訳『ドラッグ・コート アメリカ刑事司法の再編』(丸善プラネット、2006年)


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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