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秋山映美の「監獄から社会へ」

刑務所の中で運転免許証の期限が切れたら

 監獄人権センターには、「刑務所にいる間に運転免許証の更新期限がくるけど、どうしたらよいのか」とか、「運転免許が失効してしまった」というような相談が寄せられます。
 受刑者にとって、運転免許は社会復帰のためには欠かせないもの。重大な問題です。

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 まず、失効していない免許証の更新についてですが、残念ながら現在は、刑務所内で更新することはできません。免許証は誕生日を基準に更新することになっているので、毎月警察署の職員が出張して実施するということは難しいのかもしれません。

 なぜこのような相談がたくさん寄せられるようになったのかというと、2001年に道路交通法が改正され、やむを得ない理由があっても、失効後3年が過ぎると免許の回復ができなくなってしまったからです。
 それまで、海外出張や刑務所収容などのやむを得ない事由があって通常の失効後の回復手続きができなかった場合には、その事情が解消されてから1か月以内、つまり、受刑者なら出所後1か月以内に学科試験と適性試験を受ければ免許を回復することができました。
 しかし、2001年の道路交通法改正後は、失効後3年が過ぎると試験免除等の措置は受けられなくなりました。
 これは、受刑者だけでなく、海外出張している人や病院に入院している人も同じ条件なのですが、自由に動けない受刑者にとっては、特に大きな問題なのです。

 そこで法務省は2004年に通知を出して、刑務所の中でも免許失効後の試験を実施し始めたのです。

 2008年3月の国会議員の調査によると、2004年時点では20弱の施設でしか免許失効者に対する試験は行われていませんでしたが、2006年以降は、ほぼ全ての施設で試験が行われているそうです。

 しかし、この試験はほとんどの施設で年に1回しか行われていません。
 これに関連して最近よくある相談は、拘置所から刑務所へ移送されたり、刑務所から別の刑務所へ移送されてしまい、移送先の刑務所では、すでにその年の試験が終わってしまっていたりするために、試験はだいぶ先で、結局失効後3年以内に試験を受けることができなくて、その間に運転免許の資格を喪失してしまうという相談です。

 法務省としては、警察庁に協力を仰いで試験を実施し、この問題に一生懸命取り組んでくれているのですが、全ての解決には至りません。
 出所後、運転免許を再取得するためには、教習所に通ったり、費用が20万円くらいかかったりと、刑務作業で得た数万円を持って出所する受刑者にはハードルが高いのです。

 「刑事被収容者処遇法」では、刑務所長の裁量による外出や外泊が認められています。この制度を活用して、なんとか、受刑者の免許が失効しないように取りはからってもらえるといいのですが…実際のところは、なかなか難しいようです。


コメント


 恐れ入りますが、2点教えていただけると助かります。
 収監されている刑務所の場所が、住民票のある都道府県と異なる場合、試験は受けさせてもらえるのでしょうか?
 一般の場合は、住民票がある都道府県でしか、更新ができないので気になっています。
 また、失効後3年以内に刑務所で試験を受けるチャンスがあった場合に受ける試験は「適性試験」だけでしょうか?「学科試験」も受けるのでしょうか…?


投稿者: シラトリ | 2010年03月10日 16:15

回答が遅くなり申し訳ございませんでした。

簡潔にお答えすると、住民票がある都道府県と違う県の刑務所でも受けることができます。

刑務所内では、適性試験と講習を受けることになり、学科試験と実地試験はありません。


投稿者: 秋山 | 2010年04月23日 01:09

 平成15年3月に逮捕され、翌月の4月に免許の有効期限が切れ、平成21年6月に出所したのですが、公安に問い合わせしたところ失効といわれましたが、どのような場合でも失効は失効なのでしょうか。
 とすれば免許を再取得する以外何かほかに手はないのでしょうか。経済的にも厳しく、かれこれ出所してから1年10カ月経ちましたが未だ免許はありません。


投稿者: 水川 | 2011年04月09日 15:51

もうすぐ知人が刑務所へ行くのですが運転免許が拘置所にいる間に期限が切れてしかも紛失しています。どうしたら免許がとれますか。判決はまだですが3年半位ですよろしくお願いします。


投稿者: ヤマダ | 2011年08月03日 17:28

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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